男たち、野獣の輝き

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Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

硫黄島からの手紙

地獄めぐり

硫黄島二部作と言う形になった今回のイーストウッドの新作ですが、この作品が作られたことは非常に日本人としては大きな出来事かもしれないですね。

日本の戦争映画に欠けているものが全て詰まった、力作&傑作でした。

父親たちの星条旗』では断片的に映像化された硫黄島の戦いが、今回は日本側から描かれていると言う構造自体かなり面白くて、きちんと表裏になるような作品になっている感じは受けます。しかし、この作品のほうが二宮君の演じる一兵卒西郷と言うキャラを中心として、渡辺謙演じる(無茶苦茶良い!)栗林中将や他の軍人達のドラマをオーソドックスに回想形式にしているだけに、非常に感情移入がしやすい。また、硫黄島の激戦での緊張感が(物語の構造上)途切れがちだった『父親たちの星条旗』に比べて、時間軸が基本的に動かないだけに恐ろしいほど全編に緊張感と臨場感が漲っていました。

イーストウッドの公平な視線は、それぞれの軍隊にすばらしい人間とくそったれな人間を平等に配している事で明確に位置づけられているだけに、そこには予定調和のない(キャスティングすら安心できないこの不安感!)見事なドラマが生み出されていました。

細部の戦闘描写や残虐描写もスピルバーグの直接描写とは少しベクトルが違いながらも、キチンと肝が冷える徹底ブリで素晴らしく、『プライベート・ライアン』同様戦争状態を疑似体験させることがストレートな反戦意識に結びついていて良いです(スピルバーグと違って、本当はそれがやりたいだけの方便でもない)。

栗林中将が島に到着するところから、アメリカ軍の襲撃までの時間も丁寧に時間をかけて描写されているのもポイントが高い。バロン西などの美味しい役どころもキチンとはずさず登場させたり抜け目ない。
父親たちの星条旗』に引き続いてトム・スターンの撮影は彩度を極度に落とした悪夢感が良く出ています。

しかし、あれだけ『父親たちの星条旗』で重要だったモチーフを引きの画で実にさりげなく使うだけだったり、アメリカ軍の描写を極端に省いているあたりにも、こちらの映画が外伝的な扱いではなく本筋だったのではないかと思えるほどイーストウッドの本気感が漂っていて嬉しかったです。

それにしても二宮君が懸命に生きようとする姿は素直に胸が打たれますねえ。まあ、それもこれもあの”震撼”としか形容しようのない手榴弾自決シークエンスあったればこそですが。あれは本当にすごかった。