男たち、野獣の輝き

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Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

パンズ・ラビリンス 通常版 [DVD]

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劇場で観ておくべきだった……

想像以上に凄惨な映画になっていて驚きました。

全編緊張感映画の系譜は

シンドラーのリスト』以降の”シンドラー症候群”タイプと、
プライベート・ライアン』以降の”SPR症候群”タイプ

があると思うのですが(どっちもスピルバーグの映画ってところが凄い)、この映画は明らかに”シンドラー症候群”タイプに属する映画で、この手の属性のある監督のソレを目覚めさせたスピルバーグの功罪は大きいですよね。

<以下ネタバレ含む>

そういったタイプの映画なので、”パンの迷宮”を舞台にしたパートと、ヒロインが置かれた現実のパートが交錯するプロットの、現実パートが恐ろしいほど厭な緊張感に満ちているのが特徴でしょうか。
第二次世界大戦末期のスペイン内を舞台にしていて、ゲリラ討伐部隊の拠点が主な舞台になっているだけに、お約束と言っても良いぐらいの容赦ない”人殺し描写”が連発しています。
このタイプの映画では常に新鮮な”人殺し描写”が求められるわけですが、最初のフックとも言える場面がかなり新鮮味が合ったのでグイグイ引きこむことに成功しています。もちろんこういった描写を望んでいない観客は逆にドン引きするわけですが、それはそれで効果は成功している。
狩人の親子がゲリラに間違われるわけですが、かばんの中にあったワインボトルで横っ面を殴りつけるだけなら別段普通で、ポイントはその後そのボトルの底で鼻を執拗にガツンガツン何度も殴りつけて昏倒させることですね。生理的な痛さは相当なものです。それをその親父の前でやるんだからなおさらです。
見慣れたはずの銃器での射殺描写もなかなか痛さが充満していて見事でした。必ず顔面を撃ってトドメをさすあたりも執拗で、クライマックスのシークエンスに説得力を持たせています。

ゲリラの女性スパイをめぐるサスペンスもかなりよく出来ていて、いよいよばれるという場面での引っ張り方はなかなか驚かせてくれます。もうその頃になるとすっかり映画に入り込んでしまっているので、折角ナイフでクソ野郎にきりつけて口まで裂いたのにトドメを刺さないのは納得できませんでした
「なんでトドメささない!!」
と久々にうめきましたよ。
あそこはトドメをさせない理由付けをするべきだったのじゃないでしょうか。まあ、おかげでそのくだりは腹が立つほど緊張するんですけどね。


で、


肝心と言うかメインのファンタジー部分である”パンの迷宮”のシークエンスも、実は現実パートに負けず劣らず緊張感が充満しているのだから性質が悪いと言うか。結局”全編緊張感映画”の仲間入りを果たしてしまうわけですね。
通常この手の映画がそういうジャンルに属することは稀なわけで、そうとは知らない子供たちのトラウマになることは確実。でも、ファンタジーはトラウマになって何ぼと言う考えなので、これは大成功じゃないでしょうか。

監督の大好きなムシムシ描写もたっぷりの第一試練もいいですが、やはり単純な仕掛けなのに異様に緊張させる第二試練が白眉じゃないでしょうか。予告やスチールで事前の情報が一番多いと思われるシーンなのに、あれだけ緊張するのはやはり凄いです。
ただ、ここでもヒロインがブドウを食べる理由付けが弱いと思います。「なんで食べる?」と突っ込まずにはいられないです。何かしらの力で誘惑されたのなら分かるんですけど、後でヒロインが「つい…」みたいな事を言っちゃうから、「えええ!!!??」って。スペイン人はそんなにブドウに抗えないのかよ。


最後はハッピーエンドのハズなのに、哀しさが100%なのも不思議な感覚でしたね。


・・・

何が悔しいって、このDVDやたらと画質が悪いんですよ。劇場で観ておけばよかったと凄く後悔しています。
また、執拗にディティールにこだわっているサウンドデザインも絶品の一言で、これもサラウンド環境が整った状態で観るべきだったと後悔しています。むうう……



『Pan's Labyrinth』(北米盤)

アメリカではブルーレイが発売されている上に、こちらは7.1ch収録なんですよね。早く日本盤が発売されて欲しいです。