男たち、野獣の輝き

旧映画ブログです。

Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

グラン・トリノ


久々に導火線に火の点いたイーストウッドを堪能

久しぶりに”役者イーストウッド”が観られるとあって、初日に行ってきました!

小学生の頃からイーストウッドが大好きだったのですが、最近はすっかり監督業で忙しくなっているようで役者としての出番が減っていたのが残念でした。やっぱりイーストウッドが画面に出ているのと出ていないのとではボクの中での引き込まれ方が全然違う。

しかも、この『グラン・トリノ』は、久しぶりにイーストウッドの明るい部分も堪能できて嬉しかったです。もちろんお約束のドン引き展開もあるのですが、それでも単純に笑える部分が多いだけでも嬉しかったなあ。

硫黄島からの手紙』でもキチンと日本人の役者を使って、普通に台詞をしゃべらせるという、ハリウッドではなかなか出来ない事を平然とやってのけていただけに、今回もおそらくベトナムの人たちの描写は問題ないんでしょう。

激大好きな『ハートブレイク・リッジ 勝利の戦場 [DVD]』を彷彿とさせてくれる、頑固で口の悪いイーストウッドが軟弱な若者を叩き直す展開も痛快。そして、やっぱり温かい眼差しが随所に感じられて、いつも通りなのにちゃんと進化しているのが凄いと思いました。20年前のイーストウッドだったら間違いなく

「敵をとってやる」(山田康雄の声で)

と呟いて大暴れだったはず。

でも、それを乗り越えた感動のラストには胸が熱くなりっぱなしでした。


とりあえず、ただでさえ面白く出来ているのに、イーストウッドのファンに対するサービス精神が最強。

オープニングから終始爆発寸前の地雷状態で唸りまくる様も凄ければ、ちょっと(ホントにちょっと)ガレージで不審な音がしただけで、ガシャンと箱を開けるやM1ガーランドに実弾を手慣れた手つきでエンブロック・クリップ装弾、物凄い顔でまっしぐら。
こんなの気弱な少年云々じゃなく腰が抜けること間違いなし。
その後も、少年タオをいびりに現れたクソ野郎どもがうっかり庭に入ってくる場面で登場。足からパンアップでM1ガーランドは燃えるなという方が無理。
とどめが、タオの姉スーが白人のボーイフレンドと黒人のチンピラに絡まれる場面。観客の期待どおり現れたイーストウッドが、

「おい、クロ」

と、水爆台詞を浴びせて、お約束通りただ車を降りるだけでチンピラ三人を棒立ちにさせる。以前ならその迫力に声も出ないのが普通のチンピラなのに、若造過ぎて声を震わせながら精一杯の虚勢をはるもんだから、イーストウッドもド迫力の決め台詞

「世の中には怒らせちゃいけない奴がいるんだぜ。それが俺だ」(意訳)

燃える。


許されざる者』のクライマックス直前、遂に禁断の酒をあおり始めるイーストウッドに対する燃えが、この作品には充満。

チンピラの顔面を足でボコボコにした挙げ句に、ナックル・パンチを浴びせまくるイーストウッドも無茶苦茶だし。



ラストの展開なんかは、往年のイーストウッドのファンならお約束として認知されているマゾ的性質を一歩進めて、「最終的に俺の周りが酷い目に遭う方が最強のマゾヒスティック」理論を躊躇いなく披露。ここらあたりがフォローできなかった『ミリオンダラー・ベイビー』とは違って、この作品は実に感動的なラストを迎えるんですね。


イーストウッドらしい最高の映画でした。