男たち、野獣の輝き

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Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

フォレスト・ガンプ

フォレスト・ガンプ 一期一会 [DVD]

BS2にて

もう12年も前の映画ですか(日本公開から数えると11年前)。CGIによる特殊効果がフル活用された映画で初めてアカデミー作品賞を受賞したことで一つの節目としての記念碑的映画ですが、ゼメキスがスピルバーグに続いて監督賞をとったのも嬉しかったです(プレゼンターは前年『シンドラーのリスト』で受賞したスピルバーグ)。

一応この映画は夢に溢れた奇想天外な御伽噺のようなイメージの映画で、実際全体のタッチはそういうもので統一されています。ただ、中盤で突如展開されるベトナム戦争での驚愕の戦闘シークエンスはすさまじく、『プライベート・ライアン』登場以前の戦争の地獄絵演出では先駆とも言えるものです。

”戦争の疑似体験”という演出スタイルを、まず非戦闘員の視点で実践したスピルバーグの『シンドラーのリスト』。スピルバーグの中では次はメインディッシュとばかりに戦闘員の視点で戦闘そのものの恐怖を観客に疑似体験させる事を狙っていたと思うのですが、弟子筋のゼメキスが黙って見ている訳はなく、よりにもよってオスカー狙いのこの映画でそれをやってのけた訳です。個人的には拍手喝さいですが、よくもまあ許されたものだと痛感するような画期的な恐怖の戦闘シーンです。
まず第一に雨が上がるや、唐突に画面の前にフレーム・インしてきた兵士が撃ち殺され、そのまま1カットで阿鼻叫喚の戦闘シーンが始まる恐怖。次に敵が一切映らず徹底的にガンプの視点で状況を描写することで観客に戦場の恐怖感を体験させる。加えて技術的な演出においても画期的で、5.1chを縦横に駆使して弾丸の擦過音が画面のこっち側(観客に向かって)まさに雨アラレと降り注ぎ、普通に芝居しているM60の射手と装弾手が1カットのまま迫撃砲で吹っ飛ぶ。そして、いざガンプが走って逃げ出してからは徐々に戦闘のサウンド・イフェクトが遠のいていく孤立感=恐怖感。個人的には戦闘シーンのド派手な演出は、この後に続くガンプのババ捜索シーンの静けさによる恐怖を強調するダレ場として見事に機能していると感じます。特に重症のババを見てオロオロしているガンプの背後でシネスコのフレームぎりぎりをシルエットで通り過ぎるベトコン達の恐怖感が最高に好きです。

勿論ダン中尉の有名な両足のないイフェクトなども凄いんですが*1、この映画は戦闘シーンの演出を塗り替えた先駆として記憶されるべき映画です。

*1:体勢をグルっと回すときにわざわざ消している足の通過位置にテーブルを合成して観客の潜在的な疑心を打ち消す素晴らしさ。