男たち、野獣の輝き

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Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

プログラム58『八つ墓村』

意外に金田一。でも結局野村芳太郎

最後に観てから20年ぐらい経っていますが、酒井さんの影響で久しぶりに観てしまいました。とはいってもブルーレイではなくWOWOWの野村芳太郎特集の時に録画したものです。大画面で観るのは初めてですが、先日の『砂の器』同様スクリーンで観るとなんとも言えない気持ちよさがあるんですねえ。

言うまでもないことですが、トラウマ製造機とでもいうべき野村芳太郎監督作品なので、子供の頃観た時以降も「あれって金田一映画なの??」と驚くほど金田一はおろか、横溝正史の名前すら霞みかねない「野村芳太郎パワー」が漲りまくった作品です。野村芳太郎監督、橋本忍脚本、川又昴撮影、芥川也寸志音楽という、凶悪な布陣のもと、いよいよタガが外れまくった映画。

今回観直してもやはり恐ろしいのがクライマックス。洞窟の中でいよいよ真犯人が判明してからの、《異様》としか形容のしようがない気味の悪い展開。あれはやはり今見ても恐ろしい。鍾乳洞に反響するあの薄ら寒い嗚咽のような声。あんなのに洞窟の中で追っかけまわされるなんて!!!

面白いのは、シナリオ上「ミステリー」としての謎解きと平行してクライマックスを錯綜させる手法が『砂の器』同様の構成になっていて、橋本忍がどの程度考えて書いていたのかは判別できませんが、明らかに怖すぎるんですよねw

野村芳太郎が日本の誇る「怖い作家」であることは『震える舌』を例に出すまでもなくハッキリしているわけですけど、オカルトブームの影響下ではないはずの『影の車からしてハッキリと「恐怖」が画面にメリメリに込められているわけで、70年代にオカルトブームが訪れてからは思う存分遠慮無く「恐怖」を全面に押し出していたんではないでしょうか。


橋本忍脚本お約束の「回想手法」で始まる村人による落武者惨殺シークエンス。ここからして残虐描写オンパレード! 鎌で腹を切り裂く、脳天を突き刺す、竹槍で目ン玉を串刺し、そして生首野ざらし


そして、超有名な32人殺し!

山崎努ド安定の鬼芝居が、そのメイク&デザインと相まって、テンションが異常の極地。

ここはもうトラウマとか通り越して、ただただ恍惚とするぐらい素晴らしい。あの赤ちゃんを刺し殺して息の根を止める「息の根」の声が素晴らしすぎる!


桜吹雪の下を殺人鬼が突っ走ってくるっていうそのビジュアルイメージ。凄すぎてぐうの音も出ない。


確実に映画の歴史に残る名シークエンスですね。


・・・


今回観直してみて、萩原健一の芝居がやたらとナチュラルでいいんですよねえ。周りのエキセントリックな役者たちに囲まれて、すごくいい味出してます。何より恐怖におののく芝居が上手すぎる。クライマックスの恐怖は彼と小川真由美の芝居のコラボレーションなんでしょうねえ。


あと、どうでもいいことなんですが、ボクは「アンチミステリー脳」とでもいうんでしょうか、「ミステリー」的な脳の記憶能力に重大な欠陥があるようで、「犯人」とか「トリック」とか、肝心要のものを殆ど覚えていないんですよw もちろん『アクロイド殺し』とか『オリエント急行殺人事件』ぐらいの有名な物はさすがに覚えていますが、ことその他のミステリーに関しては、自分でも笑ってしまうぐらい「全然覚えてない」w どうしてミステリーの肝要な部分だけそうなっているのか謎なんですが、今回の『八つ墓村』にしても、「そういえば犯人だれだっけ?」とw あのクライマックスはトラウマになっているのに、「あの女ってだれだっけ?」と。小川真由美山本陽子ぐらいしか候補者いないのに、「どっちだっけ?」というレベル。そういう脳なので、ミステリーを何度読んでも何度観ても「最初の時と同様」楽しめるという、非常にお得な障害なんですw


多分いつか読みなおす時も全部忘れている自信あるものw