男たち、野獣の輝き

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Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

『インセプション』


久々のSFアクション大作だが

クリストファー・ノーラン監督が、『ダークナイト』大ヒットのご祝儀として自由に作ったSFアクション大作。

とはいえ、そこはノーラン監督なので『メメント』以来のトリッキーな手法を薬味に使いつつ、実は小粒な作品として仕上がっていました。

小粒というと言葉が悪いのですが、予告や勝手な思い込みから期待を膨らませすぎて、もろもろの設定なども含めて「もっと派手」なモノを予想していたからです。

もちろん完成した作品はノーラン監督の目論見通り仕上がっているのは分かりますし、監督らしいスタイルにも納得しているのですが。


時間軸の前後を入れ替えたり、夢なのか現実なのか交錯するように見せかけて、実際には割とキチンと線引きがされてる親切設計ですし、せっかく基本的な舞台がジャンボジェットなのに、そっち側には危機が訪れなかったり、それぞれの階層で体感時間がことなる設定が、使い古された「スター・ウォーズ・クライマックス」*1のためにしか機能していなかったり、タイムリミットがあるのに割とアバウトなタイミングで合わせたりして大ピンチが訪れなかったり、と。

まあ、階層ごとの体感時間の違いが、クライマックスの「さらなる深層」へ導かれるあたりは燃えるんですけど、訪れた先がディカプーの作った世界ってのはちょっと拍子抜け。もっと想像を絶するような世界が観たかった。

バンが落下する時間軸で、みんなが安らかに寝ていたり、無重力の時間軸では全員がまっすぐ寝たまま縛られたままフワフワしていたりと、随所に「笑っていいのかここ?」的なシーンが続出するのも困りものでした。ははは。

でも、全体的な構造が「仲間を集めてミッションに挑む」RPG丸出しなところや、それぞれのキャラクターにそれぞれ役割がもたされているのは大好きです。もっとも、ディカプーは常にジャック・ブラック顔で眉間にしわ寄せしているだけの省エネ演技でしたが。対して渡辺謙は相変わらず真面目な芝居でがんばっているのが頼もしかったですよ。クレジットも二番目だったし。

大変面白かったのですが、個人的にはもう5層ぐらいてんやわんやして欲しかったのが正直なところです。でも、SFとして考えるとそれじゃスマートさに欠けるって気もするので難しい。

そういえば、一番不満なのは、『ハードキャンディ』の恐怖少女がせっかく地面をロールケーキみたいにいじくっているナイスなシーンがあったりするのに、そういうパズル的な要素はまったくないってのも、「ええ?」だったなあ。あそこ、アレ思いついたから映像化しただけじゃんか。



*1:ボクが勝手に命名したのですが、シーンを交互にみせて盛り上げようとするやつ。個人的にはあまり好きじゃない。