男たち、野獣の輝き

旧映画ブログです。

Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

『大空港』


男性向けの映画

ムービープラスHDで放送されたものを観ました。

子供の頃観たのは通常枠の放送だったので、90分ちょっとにカットされていたのでしょう。25年ぶりぐらいに観直すと事件自体が起こるのは1時間半を過ぎたあたりから。でも、それまでが長く感じるのかというと全然そんなことはなく、後半に収斂するエピソードが丁寧に描かれ、それぞれがしっとりと落ち着いた演出でまとめられている。逆に子供の頃ノーカット版を観ると退屈だったかもしれません。

舞台になるリンカーン空港の描写や、登場人物たちそれぞれのドラマ、サブキャラクターの面白い描き方など、後に続くエアポート・シリーズとは明らかに一線を画する格上の演出が目立ち、邦題を『大空港』として他のシリーズとは分離させた功績は大きい(まあ、シリーズの一作目というイメージは拭えないでしょうが)。

直訳すれば『空港』としかならないタイトルに、よくぞ『大』ってつけたもんですよ。良いタイトルだ。


個人的に一夜のお話ってのが実によくて、様々なトラブルに翻弄されつつも全力で事態に対処する登場人物たちのドラマに引き込まれます。美味しいところを持って行ってシリーズに唯一続投する整備士長のパトローニもいいんですが、無賃搭乗の常習犯であるおばあさんを演じたヘレン・ヘイズも素晴らしい。どんどん事態の中心に巻き込まれていくあたりや、終始楽しそうにしているのがいい。他にも2カットしか搭乗しない神父もよくて、パニックを起こす乗客を祈るふりしてビンタするあたりは爆笑です。ほんとああいうの観るとハリウッドの映画の上手さを感じます。

クライマックスである爆破シーンも緊張感の積み上げ方と、爆発してからのパニックぶりが素晴らしい。ディーン・マーチン演じる機長が気圧差で廊下を引きずられていくカットや、客室乗務員のジャクリーン・ヴィセットが爆発で吹っ飛びながらも懸命にベルトにしがみついて吸い出されないようするカットなどは緊張感抜群。これらのシーンは、直前にパトローニが機体に穴が開いたらどうなるかをミニチュアを前にしてみんなに説明するシーンがあるから効果が倍増しているんですよね。あれは巧い。

それから、子供の頃は全然ピンとこなかったんですが、この映画の主要登場人物であるバート・ランカスター演じる空港長と、ディーン・マーチン演じる事件が起きる飛行機の機長は、それぞれ浮気をしていて、最後にそれぞれ浮気相手とうまくいっちゃうんですよ。これは今観るとかなり衝撃的で。彼らがお互いに義理の兄弟なんですが、バート・ランカスターなんてディーン・マーチンの女遊びをプンスカ怒っておきながら(妹の夫なので)、自分やちゃっかり同僚の若い未亡人とよろしくやってるんですよ。バート・ランカスターは奥さんから三行半を突きつけられ、ディーン・マーチンは相手が妊娠したことで父性が目覚めたところへこの大事件で重傷まで負ってしまったもんだから、迎えにきた奥さんなんか眼中に入らない始末。あれかわいそうだよ。

ラストも、奥さんと別れて晴れて浮気相手と大手を振って付き合えるランカスターが晴れ晴れとした笑顔で去っていくんですからね。ははは。やたらとカタルシスある。

奥さんに「あれ、どうなんだよ?」と訊いてみたら、「男向けに作ってるんでしょう」とバッサリ。確かに潔いぐらい男向けだと感じられます。ははは。思いもよらぬ解答で目から鱗です。

ベストセラーの原作も読んでみたいなあ。


アルフレッド・ニューマンのテーマ燃えすぎ。


  

『エアポート77』はボクが初めて買ったビデオで初めて録画した映画。それだけに思い入れが半端じゃない。飛行機モノなのに海の底に沈んじゃうって言うだけで(でたらめにもほどがあるんですが)、パニック映画の美味しいところを無理矢理詰め込んでいて愛しすぎます。改めて観直すと大変アレなんですが……