男たち、野獣の輝き

旧映画ブログです。

Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

『マリリン 7日間の恋』★★★

大学を出たばかりの青年コリンは、念願の映画業界へ就職する。初仕事の『王子と踊子』でマリリン・モンローと一緒に仕事をすることになる。

マリリン・モンローは子供の頃から大好きで、今でも大好きな女優。『バス停留所』をお正月の深夜放送で観たのが最初。そのあとすぐに『七年目の浮気』を観てノックアウトされました。この映画で題材になっている『王子と踊子』はなかなかビデオが見つからなかった思い出があり、やっと見つけて観たときは嬉しかったなあ。本編でオリヴィエが言っているように「軽いコメディ」なんですけど、やっぱりモンローは魅力的なんですよ。時間軸で言うと『バス停留所』の直ぐ後の出演作。1957年作なので55年前のお話ですね。

この映画、特に歴史に残る一品のような映画ではないんですけど、個人的にやたらと気持ちよく楽しめた映画でした。

先に書いたようにマリリン・モンローが大好きな事もあるんですが、主人公のコリンが体験する「夢物語」としか言い様がないお話が、本人の体験した実話ってのがいいです。もちろん大なり小なり誇張や脚色があるのは当然だと思うのですが、あのマリリン・モンローと人生の数日でもプライベートでイチャイチャするなんて男子一生の夢といってもいいでしょう。そこらへんが、なんというか胸にグっときたんですね。奥さん曰く「男向けのハーレクインみたい」。まさに至言。

マリリン・モンローを演じたミッシェル・ウィリアムズの事は後述するとして、主人公のコリンを演じたエディ・レッドメインの見事な「若造」ぶりが素晴らしい。あれで実際にはミッシェル・ウィリアムズと同い年ってんだから大したもんです。つまり当時のモンローと同じ30歳で、「24歳です……いや、23歳ですがもうすぐ24です」って平然と言ってのける。観ている間ずっと信じていたよ。これぞオリヴィエのいうところの「フリを信じさせるのが役者」だ。

1957年のイギリス映画界の風景もミニマムとは言え見事に切り取っていて、実に雰囲気良く演出されているんですよね。イギリス映画なので異邦人であるモンローの雰囲気もよく捉えられている。イギリス映画界の重鎮であるケネス・ブラナーローレンス・オリヴィエを演じるってあたりも、コレ以外考えられないというキャスティングだし、皇太妃を演じるシビル・ソーンダイクを演じる(ややこしい)ジュディ・ディンチも脚本上の拠り所となる安心感を観客に与えている。『王子と踊子』は超有名なジャック・カーディフが撮影を担当していて、彼もちゃんと登場するのもニヤリだ。余談ですが、カーディフは個人的に『悪魔の植物人間』の監督だったり、『ランボー怒りの脱出』の撮影というのが最初に知った仕事なので、後でその業績や仕事を知ってもなかなか一致させるのが難しかったですけどね。

リー・ストラスバーグの奥さんがモンローに同行してあれこれ宥めすかすんですが、マネージャーの胡散臭さも含めて洗脳しているようにも見える。オリヴィエが「ヴィヴィアン・リーが(エリア)カザンの映画に出てメソッド(演技)が嫌いになった」とコリンが言うことからも、ちょうどマーロン・ブランドを筆頭とするストラスバーグのアクターズ・スタジオによる「メソッド演技」が役者たちに蔓延していく時代だと分かります。個人的にも「メソッド演技なんてそんなたいしたもんか?」という考え方なので、「オリヴィエは『メソッド』に未来を感じて恐れている」とか言われても、「真実味のあるフリをしてくれればいいんだ」というオリヴィエの意見に「そうだよなあ」と共感してしまいましたよ。実際モンローが一番魅力的なのって『七年目の浮気』で演じた「モンローにクリソツの女の子」(実際役名ないし)だし。ビリー・ワイルダーはそこらへんよくわかっていたと思いますよ。

まあ、そんな話はおいといて。

肝心要のマリリン・モンローを演じたミッシェル・ウィリアムズ。ポスターなどを見ても分かるように外見は似ても似つかない容姿なのですが、これが本編を観ているとやたらと魅力的なんです。仕草やクセ(口に指を当てるとか)、そして喋り方が強烈にソックリで、いつの間にかマリリン・モンローにしか見えなくなってくる。家に帰って直ぐに『バス停留所』を観直したんですが、説明不可能の奇妙な違和感を覚えたぐらいw

この映画の中でのマリリン・モンローという「役」を見事に演じていると言えるでしょう。

<追記>

そのくせ旦那のアーサー・ミラーを演じたダドレイ・スコット(M:I2のほとんど印象に残らない敵ね)はソックリさんかよというぐらい本人にクリソツにしているのが笑えます。



・・・

監督のサイモン・カーティスも脚本のエイドリアン・ホッジスも調べてみるとイギリスのテレビドラマを多く手がけているようだ。撮影のBen Smithardという人も同様なのだが、シネスコでの撮影や陰影に富んだ照明など非常に丁寧な仕事で好感が持てる。
キャスティングや色彩設計なども計算されていて、モンローのブロンドや赤い唇などもすごく目立つように処理されている。
特にモンローがやおら服を脱ぎだして川(湖?)に入りだすシーンは白眉で、白く美しい肌が光り輝くあたりは非常に印象的。

7日間の恋という割にはモンローとの逢瀬が若干短く感じるのが残念。あそこはもうちょっと長くタップリと観ていたかった気もする。99分というタイトな時間も含めて、テレビ界の人たちだからまとめる技術がすごいとも言えるが、題材からしてももうちょっとだけ長くても良かったのではないだろうか。

・・・

ともあれロマンス映画としてはなかなかの秀作。



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原作の一つ。『王子と踊子と私』は未訳みたい。


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これが題材になった方。


モンローはほとんどフォックスの専属状態だったのですが、上記の『王子と踊子』だけはワーナーなんですよね。だからこのボックスには収録されていません。



モンローの映画では現在唯一のブルーレイ。まあ、そのうち上記のBOXみたいにまとめてブルーレイ化されると思いますけど。

遺作の『荒馬と女』もブルーレイになってましたね。これって中学生の時に一度観たきりだな。クラーク・ゲーブルが手綱引っ張ってる所しか記憶にない。

イヴの総て』もブルーレイになってた!


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アメリカでは先ごろブルーレイ化。ちょっと欲しい。