男たち、野獣の輝き

旧映画ブログです。

Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

『仮面ボクサー』で久々に爆笑


島本ギャグの濃縮

中学生時代に、今でも仲のよい親友から紹介されたのが『炎の転校生』。当時(今でも)この島本和彦の傑作ギャグ漫画がボクの笑いの指針になるほど、とんでもないハマり方をしたものです。

最近は島本和彦を紹介するときに「熱血」の部分がよく取りざたされるようです。でも、ボクにいわせればあれは完全に「笑わすための副産物」に過ぎず。間違いなくギャグが上位にくる関係性だと思うのです。「熱血」が空回りしたときにこそ生まれる島本ギャグを最大限に活かすために、「本気で熱い」熱血が必要になっているだけなのです。


なので、その熱血部分だけを取り上げてもまったく意味をなさず、その前後に発生する「    」(空白)の間と、必要以上に過剰な燃え絵との絡み合いを含めて「ギャグ」として意識しないと話にならない。


つまり、作品を「炎の転校生」を読まないで、「心に棚を作れ」と言われても、こっちとしては困るわけです。



まあ、偉そうなご託はこれぐらいにして、久々に復刻された『仮面ボクサー』。


高校生の時『ブロンドボクサー』の回を雑誌で読んで、のたうち回って笑っていた時のことや、単行本で書き足された後半部分を電車で読んでしまい、死ぬほど苦しんだことを思い出しました。


『仮面ボクサー』は島本和彦作品の中でも比較的知名度が低いようですが、この全一巻に濃縮された島本和彦ギャグは比類がなく、たった一冊で島本和彦ギャグをとことん堪能できるという意味では『燃えよペン』と双璧をなす作品だと思います。


特に上でも書いた『ブロンドボクサー』の回はすごい。


主人公の拳三四郎が「まったく根性がない」(一般人より1/3ってどんな主人公だよ!)という設定が明らかにされ、この「根性のなさ」ブリに死ぬほど笑う。島本和彦ギャグの神髄はとにかく登場人物たちが「人間的過ぎる」点だろう。だからこそ読者は半端ない感情移入とともに、大笑いできるのだ。そこには「バカにした」視線の笑いは一切なく、ただただ「分かる!」という共感の笑い。しかも、この拳三四郎ときたら、自からボクシング部の部員たちに腕立てを命じておきながら、自分は途中で続かなくなったので竹刀を掴んで監視役に回るせこさ。

そこに、ボクシング漫画には無くてはならない「減量」を持ってくるあたりからして破壊力抜群。敵の世界征服ジムから店屋物のうな重を届けられた時の顛末は心底面白い。

しかも、ブロンドボクサーのあっと驚く正体が明かされる終盤は涙腺が決壊するほどの大爆笑で、あのシークエンスの「間」の取り方や「めくり」の効果は特筆物。特に好きなのはあのシーンでのレフリーの描き方とアナウンスの描写。読者が完全に作品に引き込まれてしまう。(そして爆笑する)


そして、単行本で描き下ろされた最終回(これで単行本半分ぐらいある)。この回の拳三四郎人間性あふれる苦悩は感激すら覚えるほど。だんだんと(文字通り)命を切り売りしていく様と、大コマで泣きながら口にする「嘆き」は感涙。人類すべてが「分かる!」と共感してしまう。だからこそ、「手遅れになる前に気づいてよかった」という台詞に心底熱くなれる。


みんな『仮面ボクサー』読もうよ!!!


じゃないとまた絶版になっちゃうよ!!


  


アオイホノオ』の4巻が予約受付中。6月発売。