男たち、野獣の輝き

旧映画ブログです。

Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

邦画オールタイムベストテン

http://d.hatena.ne.jp/washburn1975/20081113

ボクも参加してみます。洋画中心の人間なので、邦画はそれほど観てはいないんですけど。
こういう主観的なセレクションでは、「何度も何度も観ている」が一番いい選別法だと思ったので、それが中心です。(同傾向の作品がある中では一番代表的なモノを選びました)


1.椿三十郎(言うまでもないんですが1962年のオリジナル)

椿三十郎<普及版> [DVD]

黒澤明の作品では他にも『七人の侍』『用心棒』『天国と地獄』『隠し砦の三悪人』『赤ひげ』『生きる』『羅生門』『醜聞』『蜘蛛巣城』などが死ぬほど観ている作品のラインナップになります。その中でも『椿三十郎』はダントツで何回も観ています。
中学2年生の6月1日に、『乱』の公開にあわせて『椿三十郎』がゴールデン洋画劇場で放送されることになったんですね。その予告編が凄く面白そうだったので、前作である『用心棒』を2泊3日2500円でレンタルしたんです(冗談じゃなくて当時はこれでも安かったんですよ)。
そしたら、『用心棒』が無茶苦茶面白いじゃないですか。東宝のマークからかかり始める佐藤勝の音楽からして超燃えで、シナリオとかも『荒野の用心棒』を観ているので大体は分かっているにも関わらず、断然面白いわけですよ。
名前を訊かれる例の名シーンとかでも、桑畑にポンポンとジャンプショットで(意地でもズームを使わない黒澤が好きです)カメラがよるところとかかなり痺れて。
リンチされた三十郎がボロボロの状態で危機を切り抜けるシーンの構造とか音楽の入り方とか、とにかく洋画慣れした人間には衝撃的なかっこよさと緻密さだったんです。
そして、『椿三十郎』ですよ。『用心棒』があれだけ面白かったんだから、どうなるんだよ? と。
そしたら、まあ、『椿三十郎』が輪をかけてさらに面白いわけです。今度は若侍たちとの関係や清潔な城下町が舞台だったりする関係で、『用心棒』よりもさらにボク好みに仕上がっていたんです。
椿三十郎』はスタジオ撮影やロケーションセット撮影が大半を占めている関係上、撮影時のトラブルも殆ど無かったはずですから、黒澤の思惑が凄くストレートに反映されている点も見逃せません。恐ろしいほど完成度が高いんです。すべてが計算され尽くされた映像と編集が堪能できます。
また、『椿三十郎』にはこの作品特有のサムシングが多くて、他の黒澤作品に較べても非常に「笑い」の要素が多い事が好きな部分です。黒澤作品には常にユーモアがあふれていますが、中でも三十郎がめんどくさいから理由を告げずに敵の屋敷へ行くといって出て行くあたりから始まるシークエンスは最高。若侍たちが繰り広げる子ども丸出しの口論や、それに割って入ってさらに混乱を増長する小林桂樹の押し入れ侍などは屈指の出来。全員がド真面目な顔で侃々諤々の口論をし続け(せっかく場を取りなそうと現れた婚約者にまで怒鳴り散らす始末)、全く収拾がつかないまま、よりにもよって三十郎を大ピンチに陥らせる方向に向かうという、壮絶なドタバタはあごが外れるほど笑える。あそこを超える爆笑シークエンスはなかなか未だにお目にかかれません。
『用心棒』ではあっさりとしたラストシークエンスも、『椿三十郎』では若侍との関係が生み出す何ともいえないセンチメンタルなムードがたまりません。96分しなかい上映時間なのに、この作品の世界にずっと浸っていたいという気持ちがずっと続きます。何回も観ている映画って言うのは基本的にはそういう気分を味わいたいからなんでしょうね。


2.ルパン三世カリオストロの城

ルパン三世「カリオストロの城」 [Blu-ray]
エンターテイメント作品を語る上でこの映画を外すわけにはいかない屈指の名作。全映画の中でもかなり上位にくる傑作だと思います。宮崎作品はアニメーションなので比較的若い頃に出会う確率が高いと思うんです。それゆえに脳内評価が高くなる傾向があるので、逆に過小評価されてしまうような気がするんです(実際子どもの頃観た映画って言うのは大人になって観た映画より出来が良く感じる)。ただ、この映画に関してはどう考えても面白いと思うんですね。あの終わった後の清々しさったらない。
宮崎作品の中でこの作品が唯一メッセージがないのも素晴らしいです。ただ単に面白いという。

3.息子

息子 [DVD]
今や日本映画の巨匠になっている山田洋次監督。『たそがれ清兵衛』から始まる時代劇三部作ですっかり評価が上がった感じです。
ボクの中では山田洋次監督は寅さんの人ではなく『幸せの黄色いハンカチ』の監督として認識が始まります。もちろん『男はつらいよ』シリーズも好きで観ていたんですが、失礼な話『映画』としてよりも『テレビ』って感じで観ていました。そんなときに動機も覚えていないような適当な感じで見始めたんですよ。
山田監督は『男はつらいよ』二本に自分のやりたい映画を一本という凄いスケジュールをほぼ毎年続けていたんですけど、それであれを作ったというのはホントに凄いことですよ。
それでも特に公開されれば観ると言うこともなく、結局それっきりになっていたんですけど、1997年に友人が「LD買うほど好き」という事で、それを借りて観たんですね。『息子』を。
キネ旬でも一位になっていたりして、名前は知っていたんですが、全然興味が無くて。タイトルがだいたい『息子』って。
たそがれ清兵衛』などに観られる緻密な演出とかはまだ無くて、全体的にダサい山田演出が充満しているんですけど(これ誉め言葉です)、それが生み出す生活感に完全にヤラれてしまって、LDなのにすり切れちゃうんじゃないかというぐらい観直しましたよ。
それぞれのエピソードでは季節の感覚も大変素晴らしく、暑さと寒さが強烈に体感できる映画なんです。ぼろいアパートの底冷えがする感じとか、扇風機しか無くて汗が出る感じとか。
お話もすっごく良くて、地方出身者にとってはたまらないモノがあります。

4.さびしんぼう

さびしんぼう [DVD]
大林宣彦監督の作品は大変ムラがあると感じます。ボクにとっては。うっとうしい実験性が上手くはまるときとはまらないときが激しいし。それでも「やってくれたなあ」という作品が多いのも事実で、未だに正体がつかみづらい監督ではあります。
『転校生』と『さびしんぼう』は尾道を舞台にした青春映画ですが、どちらも何度観たか分からないほど好きです。特に『さびしんぼう』は感動しまくって、電車で尾道まで行った事も含めて思い出深い作品です。ボクは広島の人間なので、ある日「そういえば尾道なんてすぐに行けんじゃねえのか!?」という事に気づいて衝動的に行きました。あのときの『映画の中の世界に実際に入り込んだ』感覚は凄かったですよ。例の「メイキング観て、これ実際に撮ったんだ!」という驚きなんか比較にならないほどの異常体験。だって手で触れるんですよ!!! 同じ道を歩けるんですよ。映画の中の道の裏が見られるんですよ。その先まで行けるんですよ!!!
あんなに濃密な一日は人生でも他にないです。オンリーワン。

青春時代に何度も観たせいで、今観直すとまともに最後まで観られないという苦しさがあるのが辛いんですけどね。アテられてしまうというかね。

青春デンデケデケデケ』と大変迷いましたが、やはりこちらを選びました。

5.機動警察パトレイバー劇場版

機動警察パトレイバー 劇場版 [Blu-ray]
この作品も『カリオストロの城』同様、エンターテイメント作品を語る上では避けて通れない。押井守作品の中では『ビューティフル・ドリーマ』と悩むところでしたが、正攻法という意味では「やればできる子」というのを実証したのは大きいんじゃないでしょうか。結局これ以外はあんまりやってないけど。ははは。
OVAからして非常に面白いシリーズでしたが、そこから半年程度の製作期間でこれを作り上げたのは凄い。やはり勢いは大事ですね。監督に余計なことを考えさせてはいけないんでしょう。
”知的な興奮”がこれだけ味わえる作品はなかなか他にないです。ミステリーとしての謎解きの快感が、これだけ映画的な技法で味わえるのは素晴らしいの一言。これに匹敵するのはオリバー・ストーンの『JFK』ぐらいでしょうかね。


6.機動警察パトレイバー2 the MOVIE

機動警察パトレイバー2 the Movie [Blu-ray]
色々考えたんですが、「よくやってくれた」としか言いようがない映画ですか。ホントに観ている間中「よくぞやってくれた」という感じで。
枷がないんですよね。エンターテイメントだったらこうしなくちゃとか、お客さんに見せるんだからああしなくちゃとか、ヒットさせるためにはそうしなくちゃとか、そういった雑念が一切感じられない。『2』というある程度の興業が保証されているからこそ出来た作品だとは思うんですが、ここまで研ぎ澄まされた感覚は商業的な映画を見回してもそうそうあるもんじゃないですね。
もちろんそれを支えている川井憲次の傑作サントラの存在も忘れてはいけないですが。


7.リンダリンダリンダ

リンダリンダリンダ [DVD]
ボクは「1日」とか「2時間前」とか、時間設定が短い映画が大好きです。この映画の勝因は『学園祭』の設定を準備日を含めた4日に限定したことではないでしょうか。たぶん当日だけだとこのサムシングは生まれなかったんじゃないかなあ。実際、うちの奥さんが先にWOWOWの録画を観てて、彼女から「4日間だけの話だよ」って聞いただけでグっと身を乗り出して慌てて見始めましたから。それぐらいグサっとくる設定でした。
映画自体も山下敦弘の持ち味が適切に活かされ(ちゃんと抑えるところは抑えている)、キャラクターへの感情移入を見事に促している点が非常に高ポイント。以前の彼の作品ではそれは基本的にギャグでしかない。また、松山ケンイチ扮するペ・ドゥナに振られて玉砕する男子高生、そいつのあまりにも男子高生面した友人、学園祭をドキュメントしている映画部っぽい二人組などなどの魅力的すぎるサブキャラたちの存在も、作品世界への没入に大変効果をあげている。
学生グループに外国人が混じるという、漫画っぽいアイデアでありながら非常にリアリティあふれる設定(韓国からの留学生というのがポイントか)も外せない魅力。
そして、一番の魅力はやはりボロボロの校舎と秀逸な仕事を成し遂げた美術陣。文字通り世界を構築しています。あれだけリアリティ抜群の学園祭とその準備風景は他では観られない。登場人物の一人が住んでいる団地の描写もこれ以上ないぐらい凄まじいリアリティ。
ユニークな作風を貫きながら、外せないポイントを存分に盛り込んである名作ですね。


8.3−4X10月

3-4x10月 [DVD]
たけしの映画では一番好きな映画です。『ソナチネ』までの4作はどれも甲乙つけがたいのですが、この2作目は音楽がなかったり、柳ユーレイが主人公だったり、「頭の上に隙間がある」構図が多用されたり、映像作品として非常に好みの作品です。
たけし軍団が多数登場するんですが、彼らの芝居は特筆モノのすばらしさです。ガダルカナル・タカのキャラが普段はふざけてるくせに、実は凄味満点の元ヤクザというあたりは傑作。
銃器のイフェクトも大変ナチュラルでいいです。


9.トキワ荘の青春


先日無くなった市川準監督。彼の作り出す静謐な雰囲気が、ボクのツボをついてくれる傑作です。トキワ荘の物語を語る上で寺田ヒロオを主人公にして、それをモっくんにやらせた時点でかなり完璧です。
それでいながら要所要所でちゃんとトキワ荘の住人であるスター漫画家たちの動向を交えるのも上手い。でも、基本的にはどこか寂しくて切ない貧乏生活がずっと描かれているのがポイントでしょうか。
モっくんがぺったんこのせんべい布団を丁寧に敷くシーンとか、丁寧に原稿用紙の枠線を引く作業とか、ぞうきんがけをしたあとに土産物を受け取るさい、キチンとタオルで手を拭くとか、ディティールの描写がとにかく最高です。


10.エレキの若大将

エレキの若大将 [DVD]
若大将シリーズはどれも最高に面白いんですが、その中でも一本となるとやはりコレ。名曲『君といつまでも』が初めて披露される作品です。エレキというガジェットが時代を感じさせてくれるのが凄く好みなのかもしれません。
スポーツの部分がアメフトだったりして、同じ作品の中でこれが同居しているのも若大将ならではですか。
若大将ユニバースの設定が一番しっくりと安定しているのもポイント高いかもしれません。