男たち、野獣の輝き

旧映画ブログです。

Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

クライマーズ・ハイ [Blu-ray]

悔しいけど、憎たらしいほど燃える

北村龍平原田眞人は個人的に好きになれない監督です(まあ、人の好き嫌いなんて個人的以外にあるわけないんですけど)。ただ、北村龍平は作ったモノも言動も欠片も好きになれないのに対して、原田眞人は「なんだか嫌い」というひどく曖昧な理由です。言動とかプロフィールとか色々だと思うのですが、作った作品は結構観ています。そして、面白かったと思えるモノも何本かあります。

でも、基本的に嫌いなのですすんでみることがあまりないのです。

クライマーズ・ハイ』も題材が好みなので気にはなっていたのですが、やはり先の理由で結局は観に行きませんでした。

しかし、元旦にTSUTAYAに寄ってみると、例の女性の店内アナウンスで

クライマーズ・ハイ絶賛レンタル中」

と言うのを聞いたときに、

「そういえば、元旦からレンタル開始なんだよな。そういえばソニー・ピクチャーズが絡んでいるので邦画には珍しくブルーレイも同時発売だったな」

と思ったのです。

そして、

「ブルーレイなら初見としてはうってつけだ」

と思って探してみたら、ちゃんとレンタルをしていました。


そして、観てみたんですが。



無茶苦茶面白かった!!


もちろん原田眞人を毛嫌いしている「好きになれない」部分も多々あるんですが、それを補ってあまりあるほど面白かったです。原田眞人の作品なのにこんなに面白いなんて!!

気に入らない部分は措いておくとして、まず堤真一を筆頭として役者陣があまりにも「いい仕事」し過ぎ!

インタビューで「邦画は説明台詞が多くて不自然」というような事を原田眞人が言っており、「またこいつは…」と思いつつ、それをこういった形で具現化させていると、ぐうの音も出ない。

脇役の一人一人まで完璧に「納得力」のあるリアリティ満点の芝居を繰り広げるのが、とにかく観ていて止められません。

事件初日に現場に行った佐山役の堺雅人なんて目つきから何から「地獄を視てきた感」が凄まじくて、基本的に新聞社内で展開する室内劇に異様なアクセントを添えていますし、同行したカメラマンを演じた滝藤賢一という人も感情の制御が出来なくなって呂律がおかしくなってしまう台詞回しが圧巻。

堤真一のドスの効いた激昂芝居も、それを受けて立つ上司三人組の遠藤憲一中村育二蛍雪次朗も大人の口論を間近で観ているドキドキ感が絶品。堤真一のゴミ箱を蹴るタイミングなんて最高過ぎます。蛍雪次朗なんて『ガメラ』の調子に乗った芝居しかしらないから、「同じ人?」というぐらいの巧さに唸りまくりました。
主人公の堤真一と真っ向からやりある部長の遠藤憲一が、土下座して謝れと迫る場面とか、「おまえ?」とか「『あんた』は止めろ」とか、枚挙にいとまがないほどヤバいです。

物語としても、事件現場の状況は殆ど描かず、新聞社に届く『情報』だけで描写する演出も感情移入を全開に促してくれますし、エンターテイメントとしても、記事を載せる載せない、印刷が間に合う間に合わないという部分で盛り上げる手法も秀逸です。

<以下ネタバレ反転>

中でもクライマックスで、スクープ記事の裏が取れるか取れないかで印刷を遅らせる算段を、あれだけやりあっていた部長と堤真一が完全にプロの顔になって具体的に合理的に話し合うシーンは燃えるなという方が無理。ああいうプロの人間が描かれる部分は大好物なんです!

<ネタバレ終了>

横山秀夫の原作も傑作だと言うことですし、NHKの製作したドラマ版も評判が良いので、そっちらあたりも観たいと思っています。


レンタルを返してきたその足で速攻ブルーレイを購入しましたよ。

レンタル版は特典がまったくないのですが、セル版は音声解説やメイキングが収録されているので観たらまたレポートします。

正月早々面白い映画が観られてさい先がいいです。


追記:

メイキング&特典を鑑賞。
メイキングは1時間弱にまとめられており、撮影現場を中心にして構成されている。オーソドックスですが一つのコンテンツとして大変楽しく観られました。
ボクの好きな編集に関しては「別テイク」集として、編集部のシークエンスが大量に収録されていて満足しました。原田眞人監督の音声解説付きで、様々な素材テイクも同時に収録されていて見応え抜群です。
ただ、SD収録なのはちょっと残念でした。海外ではメイキング素材もHDに移行しているだけに、どうせかぶれているならそういうところもちゃんとやれよと>原田眞人

音声解説は次に。