ワースト (1)
- 作者: 小室孝太郎
- 出版社/メーカー: 朝日ソノラマ
- 発売日: 2000/03
- メディア: コミック
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以前にも書いた「ワースト」の一巻を読みました。
思い切り手塚タッチの画風に、永井豪のような作者登場によるギャグなど、思い切り時代を感じさせる作風なのに、内容はかなりハードな終末SFです。
主人公が移り変わる設定やドンドン時代が変わっていく展開も、ジョジョを彷彿とするような意外性(「意外!それは髪の毛」)。
とりあえず第一部のあらすじを書きますと、ある日突然動物達が危険を察知し、人間にも一人だけそれを感じ取った者がいた。危機を動物的な勘で予知した主人公は人気のない倉庫の中で独り言を延々とつぶやきながら(ここらあたりの独白で総てを説明する古典的手法がかなり好みです)、危機の訪れを待つ。すると世界中で雨が降り始めるのですが、これが終末の始まり。この雨を浴びた人々は恐ろしい「ワースト・マン」と呼ばれる生物に変貌し、生きている人間を貪り食べはじめる。一人ぼっちの主人公が一軒家に立て篭もっての攻防戦や、生存者を探して車で遠出をしたけど時計が止まっていて大ピンチ! などなど、まあぶっちゃけていうとリチャード・マチスンのモダン・ホラーの金字塔「地球最後の男」のまんまパクリなんですが、これを吸血鬼ではなくほとんどゾンビとして描いている点がこの第一部の先見性というか斬新なところだと思います。
連載は週刊少年ジャンプ(「はだしのゲン」を連載したり、この頃のジャンプは新進の気迫に満ちてますね)に1970年から71年。つまり「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド」の後であり、「ゾンビ」の前。日本でどれぐらい「ナイト・オブ…」がこの時データとして浸透していたかは全く分からないのですが、意識していたとしたら作者の小室孝太郎は大した勉強家だと思いますし(まず本編は観られなかったでしょうけど)、知らなければシンクロニシティーとも考えられますね。
まあ、厳密に言うとゾンビっぽい描写は前半だけで、正体であるワースト・マンは思い切り宇宙人という感じなのでそれほどゾンビを意識させることもないんですが、「ゾンビ」が日本で公開される以前にキチンとこういう設定を使っている例はあまりなく、楳図かずおの「おろち」(こちらのページが非常に詳しいです。)にある「ふるさと」の村人が迫る描写が思い切り「ナイト・オブ…」的なぐらいです。とはいっても、この時期には写真はあるかもしれないですが、本編を観られているものなんでしょうかね。いや、つわものなら何らかの形で情報は得ているんでしょうね。それこそヴィンセント・プライスの映画版なり、『INVISIBLE INVADERS』のフラフラ描写を参考にしている可能性もありますかね。
ともあれ、物語は一気に加速して終末SFとしての様相を色濃くして二巻へと続きます。
(つづく)