男たち、野獣の輝き

旧映画ブログです。

Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

ランド・オブ・ザ・デッド★★★

やっと観てきました。

これを初日に行かなくなるなんて……鈍ったもんです。

先ずスター・ウォーズの時のように、軽いゾンビ暦を。


1979年
友人の家のテレビでTVジョッキー内の映画紹介で初めて「ゾンビ」の映像を観る。戦慄という生易しい表現では済まされないようなトラウマを負う。映像は冒頭付近の地下室でのゾンビ・シーン。腕を食べているゾンビの映像や、白い布に巻かれたゾンビが蠢く映像が焼き付いています。根本的に極端な恐がりなので、それ以来ゾンビという言葉を聴くだけでアウト。

1986年

この年の2月、ボクは中学二年生だったので、とにかく「コマンドー」が観たくて仕方の無い状態でした。

コマンドー [DVD]

コマンドー [DVD]

基本的に映画は一人で観ることをよしとするタイプの人間だったのですが、この時は友人達が3人も加わるという大所帯になるほど、「コマンドー」の関心は高かったのです。

そして、この時の同時上映が、言わずと知れた

バタリアン [DVD]

バタリアン [DVD]

だったのです。

この時も雑誌でバタリアンの情報などは当然知っていて、「エイリアン」の脚本家ダン・オバノンの監督作品であることや、「ゾンビ」のロメロの前作「ナイト・オブ…」の続編であることも知っていました。とは言え、東宝東和の戦略によって、コメディとして宣伝されていたおかげで、ボクはかなり軽い気持ちで観に行ったのです。

結果として、全身汗だくの上に緊張しすぎて上映後なかなか身体がいうことを効かない様なショック状態。
そう、ボクのゾンビ・バージンは「バタリアン」によって破られたのです。(だから、「ドーン・オブ・ザ・デッド」の走るゾンビに抵抗無いのかも)

一緒に来ていた友人達も「バタリアン」のことばかり話すような状態で、「コマンドー」そっちのけ(勿論「コマンドー」も最高だったんですが)。

当時は「死霊のはらわた」によってビデオによるホラー・ブームが世間を席巻しており、ロメロの新作「Day of the dead」も製作されて雑誌に写真が掲載されていたりしました。ちょうど、その先陣を切る形で「バタリアン」が公開されて相当の話題をあげたのでした。

こうなると、すっかり下地は出来たも同然で、

”何でもいいからゾンビを観たいぞ!”

という「分かいドライバー」ののび太状態


こうなってしまうと、当時のレンタルビデオ屋さんには有象無象のホラー映画のビデオが陳列されていたので選り取りみどり。

勿論最初はトラウマを克服する意味でも、金字塔とも言える

を手に取りました。

もう、ジャケットの裏の写真を観るだけで怖気づくぐらい恐かったのですが、上映時間が127分というところに物凄く心惹かれたのを覚えています。

「ホラー映画なのに何で127分もあるんだ!」

ロメロのリビング・デッド三部作の中でも「ゾンビ」は突出して人気のある作品ですが、この映画には様々な要素がてんこ盛りなので、127分は実に妥当な上映時間というか、必然的な長尺なんですよね。

とはいっても、最初に観たときは空前絶後の恐怖で、観終わってもしばらく体の震えが収まらなかったのを覚えています。

当時はその前の年に公開された「ターミネーター」「ランボー怒りの脱出」そして「コマンドー」等の影響で、エアガンがかなりの盛り上がりを見せた年でもあったのですが、当然ボクもモデルガンやエアガンを大量に持っていました。「ゾンビ」はそういう銃器的な側面でも相当の面白さを持っているので(実際「バイオハザードasin:B000062XBI)」等のゾンビ・ゲームにマニアックな銃器設定が欠かせないのも、三上ディレクターがこのロメロの「ゾンビ」を大好きな証拠の一つです)、観終わったあとは持っているエアガンやモデルガンで完全装備していたのを覚えています。(勿論すぐにMGCにM-16A1を買いに行ったのはいうまでもありません)

それでも、次の日になるとどうにもこうにもあの世界に再び浸りたくなる訳です。春休みということもあって、それこそ毎日浴びるように何度も何度も観ました。

こうなると次は

「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド/ゾンビの誕生」

になる訳です。

この映画は以前から輸入ビデオの特集などで幻の映画として扱われているのを知っていましたが、当時は「ゾンビ」などと併せてCICが一挙に発売していました。いやあ、ホント良いタイミングでゾンビ好きになったと思います。

この映画の醍醐味は一軒家に立て篭もった見知らぬ人間同士が、あれこれ争うシチュエーション・ドラマとしての側面にあって、とにかくそういうドラマを好きになるきっかけになった映画だと思います。「ゾンビ」もショッピング・モールに閉じこもる設定はそれを踏襲しているのですが、四人は割りに一致団結していますし、ダラダラ消費を謳歌することに重点が置かれているので、実際には「ナイト・オブ…」の一軒家の持つシチュエーションとは意味づけが違うのですね。
とにかくこの映画はシチュエーション・ドラマとして一級品なのに加えて、キチンとクライマックスはガソリン・スタンドへの往復という暴力的に面白いシークエンスがあったりして盛り上がるあたりがロメロ的だったりします。ああいうシークエンスがあるかないかで他のゾンビ映画とはまるで違うと思いますね。
また、当時は編集も自分で担当していたロメロが、「ゾンビ」でもガン・ショップでの武装シーンでみせたすばやいカッティングの盛り上がりを、こちらでは暖炉に火をつけるだけのシーンで見せてくれたのも燃えました。

そうこうしていると、遂に「Day of the dead」こと

死霊のえじき 完全版 [DVD]

死霊のえじき 完全版 [DVD]

の公開日です。

今でも覚えているのは、修学旅行の最終日に公開初日がかち合ったということです。

当然、駅に着いたその足で劇場に向かいました。お土産を買わずにそのお金を入場料金にあてて。

どうでもいいんですが、同時上映はジーン・ハックマンマット・ディロン共演の「ターゲット」(ちなみにノベライズはスティーヴン・ハンター

この映画ではその終末感にやられました。

いよいよゾンビが世界を征服して、生き残った人間達が地下の政府施設でただただ口論したり悩んだりが延々繰り広げられるのにしびれました。その頃になるとそういう世界の終わりというシチュエーションにかなり心を惹かれていたので、このロメロのアプローチは的確にボクの心を掴んでいたといえます。

当時は公開後すぐにビデオ化されるのが常で、「死霊のえじき」もすぐにビデオになって何度も浴びるように観ていました。

この間DVDで観直しても殆ど全部の効果音や台詞を同時に言えるほどしみこんでいました。ロメロのリビング・デッド三部作はどれも比べられないほど好きです。

勿論その他のゾンビ映画も有名どころは(無名どころも)かなりの数を観ているのですが、書ききれないし書くことはあまりないので割愛。


1991年

この年は、トム・サビーニが監督を担当したリメイク版

が公開されました。

この映画も的確なリメイクで、ロメロ自身が新たに書き下ろしたシナリオに基づいてサビーニがデビュー作とは思えぬ演出力でみせてくれました。この映画も相当な傑作です。

1994年

東京ファンタスティック映画祭でゾンビ・オールナイトという夢のような企画が催されます。(ロメロもアルジェントも来日中止ってのは笑いましたが)

この後劇場でもそれぞれ公開されるという半端ではない扱いでしたが、それぐらい「ゾンビ」のバージョンの違いはパワーを持っていたのです。

このとき初めて「ゾンビ」の両バージョンを観て、改めてその面白さに圧倒されました。LD-B0Xなども発売され、一本の映画だけでかなりの話題を振りまいてました。


1996年

そしてゾンビ・ブームの到来は意外なところから始まります。

そう

バイオハザード

バイオハザード

「バイオ・ハザード」の登場です。

このゲームは開発発表当初から猛烈に期待して、発売と同時にプレステを購入したのを覚えています。しかも3連休をとってぶっ続けでやりまくりました。

このゲームの成功が、ホラー・ブームを生み、そこに「リング」から始まる和製恐怖映画がハリウッドに流れ、ゲームの映画化が成功を収める事でいよいよ近年のゾンビ映画ブームが勃発したわけですね。ダニー・ボイルの「28日後...特別編 [DVD]」が全力で追ってくるゾンビを復活させることで、いよいよ本命の

2004年に公開されるんですね。

皮肉なことにこの映画の成功で、ロメロの新作ゾンビ映画がやっと始動することになるんですね。


そして、2005年

いよいよ本家本元の「ランド・オブ・ザ・デッド」が公開されました。

結論から言うと大変満足しました。

ロメロのリビング・デッド三部作は似たようなシチュエーションを扱って、ゾンビの生態なども同じなのですが、作られた時期がどれも10年近い単位で離れていることからも、ロメロの演出スタイルは結構変わってきています。もともとドキュメンタリー作家だったロメロなのですが、変な言い方をすると「映画的」な演出技法が目立ってきていると思います。恐らく「ゾンビ」はその丁度中間点に位置しているバランス感覚が魅力の一つとして結実しているのかもしれません。

そして、今回の「ランド・オブ・ザ・デッド」はロメロの持ち味であるブラックなユーモア感覚と、ゾンビの描き方や人の食べられ方のバリエーションなどが前面に押し出されているのが非常に面白かったです。ドキュメンタリータッチによって押し隠されていた部分がいよいよオープンになってしまったとでも言うのでしょうか。
この映画を観ると、いかに「ドーン・オブ・ザ・デッド」がロメロのスタイルとかけ離れているのかが分かります(あれはオリジナルと考えるべき)。

ロメロのリビング・デッド・シリーズは、観直せば観直すほど味の出てくるスルメ映画ですが、今回の「ランド・オブ・ザ・デッド」もその類になる予感抜群です。

今回の「ランド」はロメロが忍び寄る脅威として描写してきたゾンビに、初めて視点を移して描いている点が革新的だと感じました。今までもロメロの描くゾンビは個性的でしたが、それは生前人間だったことを意識させる部分が強かったと思います(勿論遊びも多大にあったと思いますが)。今回は明らかにゾンビ側がメインになっているのが面白く、川辺に勢ぞろいしたゾンビ軍団や、川から上がってくるゾンビ軍団、花火への目くらましが効かなくなって人間に視線を移すゾンビ軍団などなど、ゾンビ関係の行動で盛り上がる場面が多数ありました。
逆に言うとそれだけ人間側のドラマはほったらかしと言いますか、適当な感じが凄まじく、そういう部分の魅力が強かった前三部作と比較されるとかなり厳しいのも事実です。ただ、ホッパーの鼻くそほじりや大爆笑の計画性の無さ、ジョン・レグイザモの捨て鉢加減、アーシア・アルジェントの「娼婦向きだ」というキャラクター設定、主人公の影の薄さなどなど、脱力系の面白さには満ちていて、ロメロの嗜好の変化をこちらでも感じます。
更にところどころホラーとしてのショック演出や、焦らしなどに本家の冴えを感じるものの、新鮮味のある描写はあまりなく、唯一驚いたのは首なしかと思ったゾンビが、首の皮一枚で繋がった頭を振り上げて噛み付くアイデアでしょうか。
また、ゾンビだらけの世界という終末感もかなり弱いのが個人的には残念でした。なんだか「新しい世界の誕生」を見ているような、妙な気分の高揚はありましたが。
異様に燃える音楽とか、オープニングのモノクロ処理のかっこよさとか、ロメロのスタイルではないと思える部分が良かったりしたのも複雑なところではあります。まあ、単純にそこはハリウッドの職人芸を感じるところではあったので素直に良かったのですが。

何はともあれロメロの新作ゾンビが観られたのはかなり大きな喜びでした。

Land of the Dead

Land of the Dead

デッド・レコニング号のテーマなど、全編にやたらとテンションの高い音楽が炸裂しています。音楽一つとっても全てスタイルが違うのも考えてみれば面白いロメロ映画ですな。


追記:
ビッグ・ダディ(リーダーの黒人ゾンビ)の補佐を勤めるナンバー9はすこぶる魅力的なゾンビだったと思います。あの二人のスピンオフが観たいくらい。