男たち、野獣の輝き

旧映画ブログです。

Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

キル・ビル Vol.2 [DVD]★★★1/2

という訳で感想を。

さっきまで「vol.1」

を見直していたのですが、ぜえんぜん違う映画なので、ほんとにこれを一本の映画にするつもりだったのかと思うと正気を疑うというか。まあ、それはそれで面白いというか。

フロム・ダスク・ティル・ドーン [DVD]

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も同じように前半と後半でまったく違う映画になってしまうのですが、あちらはロドリゲスの演出とかそういうものは首尾一貫しているので別に違和感はないわけです。(映画なんて前半と後半でまったく話が違ってしまうものはよくあることです)

この映画はカメラワークとか演出とかの部分がまるで違うので、本来混ざり合うべきものを分離したうえで、ポストプロダクションの段階で全く別の映画に仕立てていると思います。

つまりポストプロダクションの段階で映画はこうも別のものに変えることが出来るという事なのでしょうか。

とはいっても、名手ロバート・リチャードソンの撮影までかなり別物になっているのには驚きを通り越して笑えました。

まあ、お馴染みの「トップライトでギラギラ」のリチャードソン・ショットが隙あらば挿入されるので刻印はなされているという感じですが。(それにしてもショウ・ブラザーズ映画で連発されるへたくそなズームが再現されているのは笑った。それでなくても頻繁にズームばっかりするのはオマージュを通りこしてギャグに昇華されているような)

全体的にマカロニ・ウェスタンの部分をこちらに集中させているので、モリコーネの音楽が爆発!
かっこよすぎる世界を構築しています。

で、

前作とは違って、今作では随所に新鮮な演出が炸裂していて嬉しかったです。タランティーノの力量がちゃんと猿真似だけじゃないことを証明していて。

<ネタバレ>
(注意:「ザ・バニシング」という傑作映画の重要なネタバレもあるので未見の方は絶対に読まないように)














中でもブライドが生き埋めにされるくだりは白眉で、「ザ・バニシング」

消失 ― ザ・バニシング オリジナル版 [DVD]

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へのオマージュが炸裂のパートですが、あちらとは違って箱に蓋をされる描写と、生き埋めになるまでの描写が、音響効果の至芸ともいえる妙技で堪能できます。
木に釘が打ち込まれる際の腹に響く低音や、軋む音。徐々に蓋との隙間がなくなっていく際のノイズの狭まり方とブライドの荒い息遣いのこもり方。そしていよいよ真っ暗になってからは1カットも他の映像を挿入せぬまま画面真っ黒のまま音だけで生き埋めの恐怖を体感させてくれる!

これだこれ!

この場面はホントに凄いです。ドンドン土が投げ込まれる際の心臓に響く低音処理と、一瞬訪れる悪夢のような静寂(完全なノンモン)! そして小さく聞こえてくる走り去る車の音と、閉塞度マックスのブライドの出す息遣いやノイズ、そして懐中電灯が点けられてからの密閉感満点のカメラワーク(オリジナル「ザ・バニシング」の360度パンこそないのは愛ゆえか)。

ホントに閉所恐怖症や暗所恐怖症の人がこれを劇場で見るとどうなるのか心配になるほどです。

ここだけでも何度でも観たくなる名場面でした。


そしてアクション的にはダリル・ハンナ扮するエル・ドライバーとのステーション・バン内での戦いも燃えました。

とりあえず一撃目がユマ・サーマンのドロップキック目線(爆笑)から始まるわけですから。いい映画にはドロップキックはつき物ですが。

クライマックスのビルとの最終決戦は、タランティーノらしいよた話炸裂であっさりしたものですが、ちゃんと決着がつくあたりは意外にタランティーノも魂は穢れていないというか。

ちゃんとハッピーエンドで終わるのもかなり好感が持てましたし、今までの登場人物を振り返るエンドロールも好みでした。

もっとも、全体的にかなり楽しめたのですが、おなかがいっぱいになってしまったような気持ちで、カタルシスはあまりなかったというのが正直なところです。