男たち、野獣の輝き

旧映画ブログです。

Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

ブレイブ・ストーリー(上)(下)

ゲーム通の宮部みゆきが書いた渾身の「ゲーム小説」。

ただ、「ゲーム小説」と書くとかなり誤解を招きそうだ。インタビューによればカプコンの「ブレス・オブ・ファイヤ」や「ゼルダの伝説」などのCRPGをイメージして書いていったそうだ。なるほど読んでいると物凄くCRPGがしたくなる。

で、色々と似たようなゲームを探してみたのだが、これが見当たらない。いや、似たようなものはあるし、似たような世界観を持つCRPGは山ほど思いあたるのだが、どうもこの欲望を満たしてくれそうに無い。

CRPGのキャラは「経験値」で成長を表す。だが、このゲームで描かれるような「精神的な成長」は表しにくい。勿論子供の頃のように「没頭」が容易でいて、それに対する良質なゲームにはそれがあったと思うのだが(主観的なので曖昧だが)、最近のファンタジーの世界をモチーフにしたCRPGにはどうもそれがなさそうだ(やっていないので何ともいえないけど)。

最近だと「ICO」にはそれを感じた。クライマックスの「選択」イベントでは、確実に自分の中の心の葛藤を感じられた。(偶然なのか宮部みゆきはこのゲームの小説を書いている。雑誌連載は第一部が終了し、単行本での完結だそうで非常に楽しみだ)

この小説には宮部みゆきの小説家としての意地を感じた。

キャラクターの設定などはあからさまなぐらいファンタジーCRPGのお約束を守りつつ、「物語」そのものの王道ブリに涙が溢れる。

しかも、周到なことに、普通の長編一本ほどの分量を費やして前半部分の「現実世界」を緻密に描くことで、本編の冒険と主人公の成長に強烈な説得力を持たせる。

「ファイナル・ファンタジーⅡ」をしていたときに感じた感動と興奮、「ドラゴン・クエスト」をしたいたときのワクワクを(当時には及ばないながらも)追体験させてくれるとは思わなかった。

主人公の貫通目的とその帰結には思わず涙腺が緩んだし、もう一ひねりの騎士団の隊長がヒト柱に選ばれるくだり(ネタバレ反転)にはこれまた感動した。

物語を盛り上げる基本はキャラクターへの感情移入が重要なんだなと改めて痛感した傑作。


追記:大極宮

「ゲーム女」宮部みゆきさんが、いかにゲーム好きかが読めます。「本当に」好きなのがよっく分かります。
一気に読んじゃいました。