男たち、野獣の輝き

旧映画ブログです。

Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

『武士道シックスティーン』


正真正銘の青春小説

今年初めての小説読了! やった!

しかも、すごくよかったです。いや、いい小説だから読み終えられたのかも。ありがとう誉田哲也

”青春小説”の側面のひとつに「成長」があるとするなら、この小説は間違いなく”青春小説”そのもの。そして、その「成長」が「人間としての成長」を描いていることからも、”正真正銘の青春小説”といえるでしょう。

先に読んだ漫画と決定的に違うのは、主人公の香織と早苗それぞれの一人称で描かれるスタイル。それぞれの視点から語られる物語は、文字通りそれぞれの「成長」をリンクさせて描きながらも、一人称によって読者から一歩引いた部分で描かれるのがスマート。それでいて、二つの「一人称」がそれぞれリンクしているのが読者にだけ分かる嬉しさもある。

のんびりとして天然の早苗の描き方も、武蔵ヲタクで熱血剣道馬鹿の香織もそれぞれ生き生きとして楽しい。作者の描き方もこの二人の「青臭い」部分を意識的に茶化しており、中盤までクスクス面白いコメディになっている。

すっかり感情移入してしまうと、今度は香織と早苗がそれぞれ「悩み」にぶつかり、それによって「成長」していくさまが実に気持ちがよい。こうでなくっちゃという感じ。

そして、ラストの数十ページ。ここが素晴らしい。”左手”の感覚からも、読んでいるほうはまとめにはいっているのが分かっているのに、次々と驚くようなイベントが起こり、グッときてしまう。あれはやられました。

先に三部作であることを知っているからなのもありますが、続きを読まずにはいられない。

ただ、続きありきというわけでもなく、あれはあれで単品の作品として見事な幕切れだと思います。