男たち、野獣の輝き

旧映画ブログです。

Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

『ソロモンの偽証前編後編』★★

近年稀な失神映画

宮部みゆきのこの手のやつはとにかく苦手。というのも、『模倣犯』を文庫本で3巻まで読んだところであまりの胸糞悪さにやめてしまったことがあるからです。面白くなくてとか、力尽きてとかなら途中までしか読んでいない本はたくさんあるけど、読むのが辛くてやめたなんて生まれてこのかたあの本だけです。

模倣犯1 (新潮文庫)
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宮部 みゆき
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お話の続きは大変気になるだけにいつかリトライしたいもんですが……


てなわけで、この『ソロモンの偽証』も原作が出た時には「ああ、またあの手のやつか……」と厭な予感しかしなかった。ましてや文庫になって全6冊とか、スティーヴン・キングかよ! と呆れるほど。いや、もちろん超長編小説の醍醐味も、需要も十分理解しております。ただ単純に自分に根性がないだけです。

というわけで「映画なら観られるんじゃないかしら?」という腑抜け極まる理由で(こんな理由で映画を観るべきじゃないんだけど、最近そういうの多くて困る)、ブルーレイを前後編借りてきたというわけです。

ところが上映時間を観てショックを受けます。

なんと、前編121分(スターウォーズと同じ)後編146分(アビスより長い)、合計267分。つまり4時間27分! 『1900年』よりは短いじゃんという何の慰めにもならない比較はおいておいて、長い!長いよセイラさん!!

ただ、まあ、借りてきたからには観なきゃという、相当ヘタレな後ろ向きな覚悟で鑑賞開始。

先ず前編。これが想像通りの「鬱陶しさ」爆発。イジメの描写や大人たちの描写などが大変辛気臭い。観ていてちっとも楽しくない。でも、こういう映画だから楽しいわけがない。それを文句言うのは筋違い。

いやあな気分で後編に続く。


<ネタバレあります>


ところが、この後編、監督がバトンタッチしたの? と一瞬思うほどどこか「軽い」
いや、お話が子どもたちの擬似裁判という展開になるので、それほど重苦しく感じさせないというどうでもいい配慮なのかとか、それを抜きにしても演出がどことなく「軽い」んですよ。冒頭の突然降ってくる雨とか、「なにこれ?」っていう感じで。もしかして「子供向け」とかいう戯言を使うつもりなんじゃないか? と訝しみたくなるほど。

被告人とされるいじめっ子を弁護するふかわりょうと、検事として事件を追求する主人公の女の子が、揃いも揃って絵に描いたような才色兼備なのと、その取り巻きが「引き立て役」とプラカードを首からぶら下げているような風体の子どもたちなのだから、「バカにしてんのか?!」とますます鼻息が荒くなる。

いや、タイトルに「宮部みゆき」って出てくるあたりで「これは危ない」とアラームが鳴り響いていたんですが、案の定どうにもこうにもシャキっとしないのらりくらりとした「鬱陶しいフリ」がずっと続く映画でした。

ミステリーとしての肝である「実は!」がないんですよこの映画(ストーリー)。

「実はただの飛び降り自殺でした」というのが意外なのかもしれないけど、それじゃ4時間半という時間を費やしたこっちは納得できるわけがない。

まあた、この飛び降りちゃった男の子が中二病をこじらせた「厭世君」だから始末が悪くて、映画を観た限りではこのキャラクターに対しての描写が丸っきりステレオタイプで心に響いてこないんですよ。


恐らく「イジメ」がテーマなんだから、それに意外性とかトリッキーなキャラとかは必要ないという事なんでしょう。原作もそうなんでしょう。単純にわたしがない物ねだりをしているんでしょう。日頃から作者が描こうとしていることが全てなんだから、描かれていないものを批判の理由にするべきではないと重々承知なんですが、だったらもっとグイグイ来いよと。包丁持って観ている方を殺しにかかってこいよと。


でも、あの女の先生が隣に住んでる女に逆恨みされる展開は非常に怖かった。演出もそこだけ冴え渡っていて、完全にホラーになっちゃってるんですよね。


要するに、「イジメ」ってのは完全にホラーより陰惨で救いのないものなんだから、映画で描くならもっとえげつなくするべきだと思うんですよ。


この映画優等生すぎる!!!