男たち、野獣の輝き

旧映画ブログです。

Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

『ロッキー4炎の友情』を聴きました!

本編の殆どに音楽が流れるミュージック・バトル・ムービー

シルヴェスター・スタローンが映画界に残した功績は大小功罪様々あるが、あまり語られない業績の一つに80年代サントラ業界を席巻した『歌ものサントラ』に対してのものがある。

下積み時代が長かったこともあって、ショービジネスにおいて「ヒット」することがどれほど大切かを身にしみて分かっているスタローンは、『ロッキー』以降ドンドンと下がり続ける自身の興行的価値を回復すべく、80年代にはいってから製作された『ロッキー3』になりふり構わないヒット要素を叩き込む必要に迫られた。その施策の一つがサバイバーの主題歌『アイ・オブ・ザ・タイガー』を本編に起用したことだ。(映画本編の「強いアメリカ」を意識したスタイルも、実は80年代レーガン政権下におけるハリウッドのブロックバスタームービーのスタイルの先駆けといえるものになる)

そして、見事主題歌の大ヒットと共に『ロッキー3』も大ヒットを記録する。

《主題歌の大ヒット》によるレコードの売上とそれが生み出す宣伝効果は、ノベライズによる書店でのプロモーション効果とは違い、若い世代にアプローチする集客効果を生み出すことを証明したのだ。

ハリウッドのプロデューサーたちがそれを見逃すわけもなく、続く83年に製作された『フラッシュダンス』において、『歌ものサントラ』の経済効果は決定的なものになる。純然たるサントラファンにとってはこれ以上ないほどの「余計なこと」とも言えるが、良しにつけ悪しにつけスタローンが80年代から続く現代のハリウッドのブロックバスタームービーのスタイルを革新した先駆者であることは映画史のなかでも重要なポイントだ。

そして、85年。

ランボー/怒りの脱出』において「強いアメリカ」路線のスタイルの頂点を極めたスタローンは、その数カ月後に今度はこの『ロッキー4』で『歌ものサントラ』との相乗効果を決定的なものにする。


「ロッキー4」オリジナル・サウンドトラック
サントラ ヴィンス・ディコーラ サバイバー ジョン・キャファティー ケニー・ロギンス ジェームス・ブラウン ロバート・テッパー ゴー・ウエスト タッチ グラディス・ナイト
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本編を観ている人にはお分かりと思うし、このブログを読んでいる人でまさか『ロッキー4』を観ていない人間なんて存在しないと思うので、詳しいことは書かないが、この『ロッキー4』はとにかく普通の映画ではない。


上映時間が91分という時点で、とてもアカデミー賞受賞映画の続編とは思えないし(ちなみに4作どころか6作も続いているアカデミー賞受賞作品は『ロッキー』以外にはない!)、その91分という上映時間のほぼ全編に何らかの音楽がかかりっぱなしなのだ。しかも、訓練シーンが二回もある大盤振る舞い(91分なのに)、さらにロッキーがエイドリアンと口喧嘩して家を飛び出して車を走らせるだけでまるまる歌一曲分のPVが流れるという凄まじさ(91分なのに)。もっと言うなら、エキシビジョンマッチである(映画において前座みたいなもんだ)試合の前にジェームズ・ブラウン本人が登場してのショーも当たり前のようにまるまる一曲そのまま使われる(91分なのに)。あげくに、オープニングですら『3』の「アイ・オブ・ザ・タイガー」をそのまま使うだけでは飽きたらず、同じくサバイバーの新曲「バーニング・ハート」(名曲!)を「ロッキーがソ連の空港に到着する」だけのシーンにまるまる流す(91分なのに)。

『NO EASY WAY OUT』(名曲)PVだが、実はなんとこれが本編にまるまる流れるのだ! 信じられねぇだろうが、これは紛れもない事実だ!


というように、MTV世代(敢えてそう言おう)である80年代の若者たちに対して「アーイ・ウォンチュー!! 種馬が欲しいぃ!!(内海賢二の声で)」と言わんばかりのMTV感覚で全編を貫き通している。ある意味これはスタローン自身がその「歌ものサントラ」と「MTV感覚」を映画に持ち込んでしまったことに対する引導とも思える作りだ。


で、当然ながらまっとうな映画ファンから(じじいたち)はそっぽを向かれることになるが、我々のようなスタローン・チルドレンにとっては戦慄のような衝撃を叩きつける結果になる。


結果、公開後の中学教室では、皆が皆拳を叩きつけ合って「ドカアアアアン!」と爆発(予告だけならいざしらず、本編でも冒頭でちゃんとグラブが爆発する)させまくった。


体育の時間になれば皆が皆腹筋をはじめ、山があればそこに駆け上って「ドゥラァゴォォォォォォォォォ!!!!!!!!」と叫びまくった。


ついで、「ガキに受けるものは片っ端から取り込む北斗の拳」では、ドラゴも星条旗のイメージもすべてキチンと取り込まれたことが、どれぐらいこの映画がガキどもに受けまくったかという紛れも無い証左だ。


というわけで、この『ロッキー4炎の友情』という映画がどれくらい映画史の中で重要なポジションに位置しているかが分かっていただけたところで、今回のサントラだ。

・・・

ちょうどCD前夜ということもあって、ボク自身もこのサントラはレンタル・レコードで借りてきてカセットに録音したものを呆れるほど聴きまくってました。なので、構成も音もすべてが懐かしいとしか言い様がないし、なによりも思い出補正を差し引いてもどれもこれもいい歌ばっかりだ。そして素晴らしいのは、ヴィンス・ディコーラによる本編スコアも『トレーニング』と『ウォー』(戦争てww)の2曲がちゃんと収録されていることですね。どっちも掛け値なしに燃える名曲。『ロッキー』といえば切っても切れないあのビル・コンティをこれぐらいさり気なく切り捨てる感覚も相当異常だけど、代わりの音楽がとにかくこの作品にふさわしいんだから仕方がないw それぐらいこの作品が『ロッキー・シリーズ』に加わっている事そのものの「異物感」たるや並ではない。『ロッキー・ザ・ファイナル』がある現在において、恐らくこの『4』と『5』は黒歴史として葬っても多分それほど観ている人には影響はないはずで(アポロが死ぬけど大したことじゃない)、いっそスピンオフとして扱ったほうがこの作品は正当に評価されるんじゃないかとも思える。(5は無視して)


ロッキー4 炎の友情(Rocky IV)
ヴィンス・ディコーラ(Vince DiCola)
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全中学生が待ち望んだオリジナル・スコア盤も現在では簡単に入手可能。いい時代になったもんだ。この二枚は『ロッキー4』を愛する人間ならマストバイ。


そして、改めてこの映画史上稀にみる「燃え映画」である本作を一人でも多くの中学生たちが観ることを祈ろう。


合言葉は「 I MUST BREAK YOU」だ!


あ、今イワンドラゴが……


さあ、みんなも『Hearts On Fire』(名曲)を聴きながら特訓だ!!!!

NO PAIN