いよいよ黒澤明監督の東宝作品がブルーレイで発売開始!
HiVi11月号で野上照代さんを招いてブルーレイ版『七人の侍』を鑑賞する記事
音も良くなっているそうです
いよいよ今週金曜日に(店舗などでは前日の木曜日には入手可能でしょうか)発売される黒澤明監督の『七人の侍』。2ページほどの記事でしたが、今月のHiVi11月号で視聴記事が掲載されていました。
現在では数少ない生き証人である記録の野上照代さんと、晩年の黒澤明監督の助手を務め、自身の作品でも『雨あがる』(こちらもBD化希望!)などを監督している小泉堯史さんを招いて鑑賞。
映像はブルーレイとして問題ないレベルになっているようで、恐らくフィルムで観ている時よりも綺麗になっているようです。DVD化のさいにも東宝はきめ細かいリファレンスを行っていましたが、今回もかなりの長時間をかけて再度リファレンスを行っているようです(そちらもコラムに記載)。
初期黒澤作品(この作品は中期か)で一番問題になるのはやはり「音」。ただでさえがなり立てるようにセリフをしゃべらせるのが好きな監督な上に、録音設備も当時はまだよくなくて、オリジナルの時点でかなり聞き苦しい状態だったと思います。今回そちらの音声がかなり改善されているという旨の発言が野上照代さんからあって、これは非常に楽しみになってきました。
ボクも奥さんによく真似してみせる、菊千代が百姓のことについて感情を昂ぶらせて話すシーンでも、「何を言っているのかわかる」という黒澤作品ならではの感想も。ははは。(そういえば、字幕はちゃんと収録されているんだろうなあ。DVDにもあったから間違いないと思いますけど)
リバイバル公開時にリニューアルしたのものが、黒澤監督自身による最後の調整になるはずで、刀の斬る音の付加や種子島の銃声のズレを修正しています。DVDにも収録されていた、オリジナルのモノラル音声、監督によるドルビーサラウンド音声、リミックスされた5.1ch音声、それぞれロスレスで収録されていると言う事です。
DVDでは二枚組だった作品ですが、ブルーレイは一枚に収録しておりそちらも嬉しい。やはりこの作品は途切れずに観たいもんです(休憩も含めて)。
同時に発売される黒澤作品の中でもダントツのオススメがこちら。個人的には黒澤明も含めた全映画の中でも5本の指に入る傑作エンターテインメントだと思います。
黒澤明監督というのはホントに無駄なイメージがつきまとっており、これだけ作品に対するハードルをあげられてしまっている損な監督はいないなあと思います。
純粋に面白いシナリオを、恐ろしいほどの完成度で作品にする手腕はまったく恐れ入るわけですが、とにかくそういう先入観をとっぱらって作品をまず観て欲しい。
そういう意味でもこの『椿三十郎』は一番オススメ。理由は10個
1.上映時間が96分と短い。
2.作品の設定が江戸時代後期なので、イメージが簡単につかみやすい。
3.三十郎と9人の若侍たちとの掛け合いが大爆笑で面白過ぎる。
4.プロットがシンプルでとにかく分かりやすい。
5.なのに二転三転するので先が気になって仕方がない。
6.加山雄三と田中邦衛が出演しているので、現在の視聴者にも感情移入しやすい。
7.難しい言葉も出てくるが、許容範囲内で現代的なセリフが使われている。
8.録音機材の進化で、何を言っているのかよく分かる。
9.三船敏郎の殺陣が恐ろしいほど燃える。
10.全編にユーモアがあって観終わった後に幸せな気持ちになれる。
観終わったら何度でも観直したくなる作品なので、何度も観直すとその緻密なシナリオや、音声や音楽の絶妙な処理、シネスコを使い切った構図や動きを意識させない自然なカメラワーク、などなどの黒澤明絶頂期のエンターテイメント・テクニックに酔いしれていただきたい。