男たち、野獣の輝き

旧映画ブログです。

Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

悪魔のいけにえ

id:sumoguriさんがリメイク版『テキサス・チェーンソー [DVD]』の前日譚にあたる『同・ビギニング』を試写会で観てきたので、勢いでそのままオリジナルを鑑賞。

ニューマスターを使用したビデオ版での鑑賞。

ボクは最初に観たのがCIC版なので、マスクを外した4:3スタンダード・アスペクトが遺伝子に刷り込まれています。DVDでは国内外問わず全てのバージョンが上下マスクのビスタ・サイズとなっています。まあ、劇場公開時のアスペクトがオリジナルではあると思うのですが、広角レンズの迫ってくる雰囲気とか、移動撮影の素晴らしい移動感なども上下のマスクがないと効果が段違いです。精確にはスタンダード版もビスタサイズよりは左右がトリミングされているので、次世代ディスクでいいからオリジナル・フィルム・ソース版の収録をしてほしいですね。(上下左右黒味で)

日本版のDVDは廃盤になってプレミアがついちゃってますが、TSUTAYAなんかではまだレンタルで置いてあったりしますし、上記のようにあえてスタンダード版のビデオで鑑賞するのもオススメしたいですね。

是非この映画の「技術に立脚した狂気」が生み出す究極の臨場感を体感して欲しいです。

撮影は広角レンズや望遠レンズを巧みに駆使し、ズーム・レンズの使い方も効果的。移動撮影とパンニングをあわせた流麗さや、フォーカス送りの丁寧さ、追われるものと追うものを同一フレームに捉える緊迫感のある(ありすぎる)構図、決してイマジナリーラインを越えない事で逃げている方向や位置関係が完璧に観客に把握できる(基本的ですが疎かにされがちな)等の、凄まじい高度な技術のオンパレード。
編集にいたっては、最近の映画に蔓延するシーンの途中で別のシーンへ切り替わる事で観客の集中力を途切れさせる観客を無視した構成は一切無く、一つのシークエンスが丸ごと途切れず描かれて、テンションの最高潮で常にブツっと切り替わる(この感覚が非常に緊張感を次のシークエンスになっても継続させる)。シーン毎でも通常なら1ショットか2ショットでつなげるアクションを、生理を逆なでるように(個人的な言い方で言うなら”生理を削る”)細かくショットを切り替える事で観客に安心感を一切与えない。ヒッチコックが『鳥』で抜群の効果を証明したジャンプショットも、開いている扉へ使われたり、追ってくるレザー・フェイスを横移動で捉えたショットでも使用され、ここぞということで凄まじい効果をあげている。
サウンド・デザインについてはフランクリンが無意味にエンエン鳴らすクラクションや、鉄扉の閉まる硬質で誰もが心拍数のあがる衝撃音、ニワトリのイライラする鳴き声、やたらと澄み切った青空に緊張感を与える虫のさえずりや梢の音、タライに落ちる時のハンマーの音、頭を殴る時のグチャ、痙攣する時の湿っぽい屋内の反響音、そして勿論驚異的な効果をあげる電気ノコギリの爆音!
そして、不快極まるメロディの全く無い音楽。
こういった技術的な部分と、芝居とはとても思えない迫真の芝居、凝りに凝った美術群などなど全ての要素がスキのない完成度をもってして、初見時の凄まじいインパクト=究極の臨場感を生み出していると思うのです。

思うにトビー・フーパーは、スピルバーグの『激突!』に凄く影響を受けていると思うのです。対抗心と言ってもいい。60年代にヒッチコックが『サイコ』などで展開したショック演出、ロメロが『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』でみせた巧みな技術などから、スピルバーグが『激突!』で昇華させたものを、更に別の方向へ応用発展させる事がフーパーのモチベーションだったと思うんです。そして、スピルバーグは更に対抗心を燃やして『ジョーズ』でこの手のショック演出の完成をみせたと捉えるべきなんじゃないでしょうか。

ですから、『レイダース』でルーカスとタッグを組んだスピルバーグとかよりも、『ポルターガイスト』でのフーパーとの顔合わせの方が実際にはホラー映画の歴史の中では大きな意味があったのかもしれないですね。