男たち、野獣の輝き

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Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

パッション [DVD]★★★

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ブレイブハート [DVD]メル・ギブソンが9年ぶりに発表した映画です。「ブレイブハート」の時から残虐描写には定評がありましたが、それがメル・ギブソンの趣味であることは明白で、それを思いっきり証明したのがこの映画という雰囲気です。ただ、事前に受けた情報と、ボクの思い込みとは打って変わって残酷描写にはそれほどの新鮮味は感じませんでした。「ブレイブハート」の残酷描写とはまったく異質なものだからかもしれません。それは、生理的な痛みが関係しているように思えます。この映画で描かれるイエスの受難は宗教に全く無知なボクですらいつの間にか知っている事をリアリティ満点に描くわけですが、鞭打ちは非常に痛そうでも、体感させるほどの痛みは伝わってこないんです。それは多分痛みの種類が想像しにくいのだと思うのです。例えば史実では「釘を打ち込まれたのは掌ではなくて、手首である」というのを読んだことがあるのですが、これは読んだだけで痛さが手首に走る。ズキーンとする。ボクの中ではこれが「生理的な痛さ」です。*1
結論から言うと、この映画で描かれる残虐描写はどれも他人事にしか感じられず、もしかしたらそれがこの映画の狙いなのかもしれないと思ったりもしました。周りの人たちは凄く悲しいつらそうな顔をしているけど、内心は「自分じゃなくて良かった」とか「痛そうだなあ」という見世物小屋の観客的なイメージを喚起させるんですねえ(あくまでもボクのイメージですが)。
勿論この映画を観ていて充分胸に来るものはあって、それは嬉々としてイエスに鞭打つ周りの連中ですね。ホントに人間のああいう部分はかなり体感できるので始末が悪いです。
「ブレイブハート」で見事すぎる映像を創造した撮影監督ジョン・トールは今回参加していなかったので、映像はどうなのか心配だったのですが、今作の撮影監督キャレブ・デシャネルも見事な映像を作っていたと思います。(しかし「マジック・ボーイ」の監督って…どういう経歴なんだよ)
音楽のジョン・デブニーは意外すぎる抜擢だったわけですが、これまた宗教色一辺倒ではなく、結構高揚する音楽もアテてきて良かったです。まあ、それにしたって、どうしてこの人を起用したのか全くわからん。アメリカ映画は協会の関係なのか全く予測の付かない抜擢が多々あるにも関わらず、それでもちゃんと仕事をこなしてしまうところがプロ集団として感心します。

*1:「ブレイブハート」の残酷描写はどれもこれも観てるだけで「痛い」のが連発します。