男たち、野獣の輝き

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Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

『小さいおうち』★★★★

3度鳴る警笛と列車の音

山田洋次監督の最新作『小さいおうち』を観てきました。

山田洋次監督の映画を観るのは実は久しぶりで、ファンとしてはお恥ずかしい限り。そして、今回の『小さいおうち』は今まで観てきた山田洋次監督作品の中でも相当上位にくる「お気に入り」になりました。もちろん自分が山田洋次監督の映画を偏愛しているというのもありますし、年間ベスト級といっても普段ボクの映画の感想を読んでいる方々に「諸手を上げて推薦」というわけではないのですが、嗜好は個人のものなので、まあ気にしないでおきましょう。

とはいえ、かなり素晴らしい映画です。


まず役者さんたちが誰も彼も良い。山田洋次監督は役者さんの魅力を引き出すのが上手ですが、映画賞を受賞したという主人公の黒田華も、もはや山田洋次組の顔と言ってもいい吉岡秀隆も、脇を固める人たちも全員魅力的に描かれています。さらに現代パートに登場する妻夫木くんも、そのお姉さん役の(お気に入り)夏川結衣さんも出番は少ないながらも「山田洋次の映画」を観ている気分にさせてくれます。しかも、これまた山田洋次監督の映画には欠かせない倍賞千恵子さんが恐ろしいほど良くて、心をグイイイっと鷲掴みにされます。

そして、言うまでもなく「松たか子

寒気すら覚える芝居ですよ。本当にちょっとした仕草や挙動で感情がビンビンに伝わってくるし、「物語」そのものもそれで物語られるレベル。

アレは凄い。

「手を後ろに組む」だけであれだけ息を呑ませるのもすごい。


あ、念のため書いておきますと、山田洋次作品定番の「クソ親戚」は、今回待ってましたとも言える室井滋が抜群の安定感で担っておりました。『武士の一分』の桃井かおりに次ぐほどの「めんどくさい」ブリが大笑い。

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山田洋次監督の映画の魅力のひとつは「生活感」

今回も『武士の一分』で見事な効果を上げていたセット撮影が再度採用されていますが、リアリティとはまた少し違う独特の空気を映画世界に見事に醸成させていました。

中でも特にお気に入りは倍賞千恵子が住んでいるボロアパート。フィクション内のボロアパート(及び四畳半)好きとしてはヨダレがでるほどたまらないシロモノでした。愛してやまない『息子』の永瀬正敏が住んでいるボロアパートに勝るとも劣らない。あれが観られただけでもお釣りが来るほどの出来でした。

・・・

最後にここからはネタバレになるかもしれないのですが、



主人公タキと時子を含めた「百合」具合が非常にツボでした。まさか山田洋次監督の映画でこんなエロティックな(直接描写はもちろんないんですが)雰囲気を堪能できるとは思いもしませんでした。

特にタキが時子の脚をマッサージしてあげるシーンが大変エロくて。後半の作家先生の足を踏んであげるシーンとも繋がる絶妙なエロさ。

中嶋朋子扮する時子の同級生なぞは、それこそ直接的な宝塚風のテイストですし、自覚症状のないまま翻弄されるタキがたまりませんでしたよ。ええ。



久しぶりに山田洋次作品を観て、やっぱりいいなあと再確認したので、見逃していた作品を補完したくなりました。


オススメです!