午前十時の映画祭『ロッキー』★★★★★
「するかしないかの分かれ道で、する!というほうを選んだ勇気ある人々の物語です」(荻昌弘)
ボクは以前から決めているのですが、「好きな映画はなんですか?」と訊かれた時
「ロッキーです」
と断言即答することにしています。
通常、映画ファンであればあるほど、上記のよくある質問には答えにくいものです。一本なんか決められないからです。
個人的にはボクを映画道に引きずり込んだ『ジョーズ』をあげるのが順当ですし、疑問の余地なく「一番好きな映画」なのですが、『ジョーズ』はもうそういう次元でもないといいますか。
では、即答してまったく問題ない映画はなんだろう?
と考えた時に、真っ先に浮かんだのが『ロッキー』です。
もちろん『ロッキー』もそんな次元ではないといえばないんですが。
ともあれ、『ロッキー』は間違いなく「一番好きな映画」です。断言してもいいのですが、この映画以上に好きな映画は存在しません。
このブログの映画の★は四つ星が満点です。なので、『ロッキー』は★★★★★です。
つまりそういう映画です。
が、
この映画をボクはスクリーンで観たことがなかったのです。映画ファンとしては恥ずかしい話ですが、観る機会がなかったのだから仕方がない(開き直り)。
しかし!
遂に午前十時の映画祭でスクリーンで上映されることが決定し、今回観てまいりました。
残念ながらフィルムではなくデジタル上映でしたが、ハッキリ言って大きなスクリーンと大音量で観る『ロッキー』は最高としか言いようがありませんでした。
文字通りスクリーンで観ると今まで何百回と繰り返し観てきた『ロッキー』が生まれ変わったように新鮮で、その濃厚な世界が目の前で本当に展開しているのが体感できるのです。これぞ劇場体験と言わずして何でしょう。
あのタイトルが画面いっぱいにスクロールする冒頭から、何もかもが素晴らしく胸に迫ってきます。
観る前は「せっかくだから感動するつもりで観ようかな」と正直ナメてかかってました。
そんな心配はまったく不要! 事実場内には感動ですすり泣く声が多数。しかも満員!!
もうミッキーが家に来てから、怒鳴り散らしたロッキーが玄関から出てきて追いつき、背後に電車が走って行くシークエンス。あのあたりから空前絶後にヤバかった。
ボクは映画を観てほとんど泣かない人間なのですが、文字通りボディーブローが次々と画面から襲ってきます。何から何まで素晴らしい。
そして、いよいよ始まるトレーニング・シークエンス。
ロッキーのテーマが流れ始めてから、完全に「映画を観ている自分」が消失。
ロッキーと共に疾走し、腕立て伏せをし、埠頭を全力疾走していました。
ラストの試合なんてパンチの打たれるタイミングや、避けるタイミングまで完全に脳内で再現可能なほど観ているのに、ガッツォと共に「そこだロッキーやっちまえ!!」と心のなかで絶叫。
しかも、ゴングが鳴り響いてからかかりだすビル・コンティの「ファイナル・ベル」と共に再び涙腺が決壊。
ベートーヴェンの第九は最後の最後、究極に盛り上がったところで「コレ以上は無理」といわんばかりのタイミングで突然終わるんですが、まさにこの『ロッキー』のストップモーションによるエンディング処理は誇張なしにそれに匹敵します。
自分の中の映画愛が体中に膨張して、次から次へと涙がほとばしり出ました。
あの異様な感動は何なのかと問われると、やはり月曜ロードショーで初放送された際に荻昌弘先生がおっしゃった、上述の解説に尽きます。
それを関わった全スタッフが映画の神様に全面的にバックアップされて「作らされた」映画なのです。無神論者で無宗教主義者ですが、間違いなくこの映画は人類に贈られたギフトです。そんな映画の感動が色褪せるわけはなく、永遠に映画ファンの心を掴み続けるでしょう。
本当に幸せな映画体験でした。ありがとう午前十時の映画祭。
羽佐間道夫さんをはじめとして、全キャストがハマリにハマっている名吹替も収録!! 「兄さん豚よぉ!」(松金よね子)
ビル・コンティはこの音楽を作るために生を受けたと断言できる傑作。