男たち、野獣の輝き

旧映画ブログです。

Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

『パシフィック・リム』★★

無粋を承知であえて書く

御多分にもれずボクも超期待して行きましたよ。としまえんIMAXの初日初回に!

一応多分一番高い料金を払って、おそらく日本でも上位に来る環境で観たことを踏まえて書かせてもらうけど、正直ガッカリしました。


まあ、そのガッカリした原因の多くは「チャンネルを合わせ損なった」ことですし、好きなところもいくつかあるので、大上段に批判する気はないんです。

ただ、デルトロ監督が目指したアプローチに関しても、もうちょっと脚本で何とかならなかったのかと思えるとことが多々あったことと、「もっともっと面白くなるだろうに」と、終始モヤモヤとした気持ちが離れなかったのは事実です。

まず、チャンネルを合わせ損なった事なのですが、ボクは個人的に「現実世界に巨大怪獣が出現して、それに巨大ロボットで立ち向かう状況」をリアリスティックに見せてもらえるものと期待しすぎたんですね。それを抜きにしても、先ず「怪獣映画」であり、そしてその世界に巨大ロボットが挿入される作品世界を期待していたのです。

実際には、この映画は「巨大ロボット映画」以外の何物でもなく、怪獣はその敵として存在しているに過ぎません。過ぎませんと書くとまた語弊があるのですが、要するに「ロボット映画」だったということです。実は先行して聴いていたサントラの時点で「ああ、これはロボット主体の映画なんだな」と分かってはいたんですが、そこでチャンネルを切り替えられなかったのは痛恨でした。

また、日本の特撮映画界には「怪獣プロレス」「ロボットプロレス」というジャンルが存在しており、その手のジャンルの映画に関してはボクはまるっきり愛情を持っておらず、それに関して云々かんぬんできるほどの知識も理解もないのです。なので、この映画が「リアリスティックに怪獣対ロボットプロレスを再現」していることに関して、有効な発言を持っていないとも言えます。

事実、子供の頃に幾つか観たことのある「怪獣プロレス」系の映画には全くといっていいほど興味をそそられませんでしたので、これは生まれ持っての趣味の問題なのでしょう。


・・・


とは言え、「各国が作った複数の巨大ロボットが怪獣たちと大乱戦を繰り広げる娯楽映画」としてこの作品を捉えた場合でも、ボク個人としては「もったいない」モチーフやガジェットが多すぎるように思うのです。

中でも一番問題だと感じたのは、各国の魅力的なロボットが登場して戦うならば、そのロボットが「それぞれが必要なロール(役割)を持っていない」こと。チームバトルとして成立しておらず、単独で戦って負ける→助けに来て勝つ→一人でやっつける。もちろんこういった構成が一般的であることも知っていますし、観客がスムーズに理解しやすいことも認めます。「チームバトルじゃねえし」というのも。ただし、もう一段階上の次元を目指すなら、各国のロボット及びパイロットには誰が欠けても怪獣(たち)には勝てない状況を作るほうがいいとボクは思うのです。せっかくの魅力的なロボットたちが主人公ロボットのための噛ませ犬では、それこそプロレスじゃないですか(プロレスを批判するつもりは決してないです)。ボクは映画を観にきているわけですから、映画(創作物)でしか観られないものが観たいことと、映画というのは常に前進し続けて欲しいと思っているのです。ジョス・ウィードンが『アベンジャーズ』で成し遂げた偉業はそういうことだと思うんですよ。この映画はその部分が非常にお粗末といいますか、工夫が足りない。

そして、何よりもガッカリした原因は、「目新しさ」がまるでなかったことです。もちろん実写映画でここまでロボットと怪獣をバトルさせまくるという映像は特筆に値しますし、それを実現させたデルトロには敬意を表しますが、ボクには正直「驚くような」ものは何もなかったです。いつかどこかで観たようなものばかり。(タンカーは除く)

もちろん「いつかどこかで観たようなもの」でも同じものはないわけで、限りなくリアリスティックに描写することに関してはボクも大いに賛成ですし、大好物なものでもあります。でも、それならそれで「おおお!」という描写を再現して欲しかった。ボクの中ではまだまだ日本のアニメーションで観た「かっこ良すぎるロボット」のアクションや演出や描写のほうがどれもこれも上回っているのです。
脚本がテンプレートでも、描写=つまりそれぞれのアクションの描き方、カッティングやライティング、編集やフレームインアウトのタイミングなどなど、どれもこれもが「ピン」とこない。もっと端的に言えば「ボクの中の燃料に着火しない」。つまり燃えない。

ボクの中の娯楽映画の指針は「燃える」こと、それ一点につきますので、「燃えない」ことにはどうしようもないのです。もちろん「燃える燃料」はみんなそれぞれあると思うのです。が、現在の描写が最善とはどうしても思えないのです。もっと言えば「もっと燃えるようにすれば、もっと面白くなる」という単純な原則が当てはまるハズなのです。観客は(少なくとも僕自身は)贅沢なもので、与えられた食事が今まで食べた最高の食べ物だったり、「あ、これ結構好きなんだよね」というものであれば、大満足が得られると思うのです。ただし、「今まで食べたこともないような調理方法」で作られた「もっと」美味しい料理を出されれば「これ、最高じゃん!」となると思うんです。


例えになるかどうか分からないのですが、スピルバーグの『ジョーズ』を観る前の観客は、全員それ以前の面白さしか知らなかったわけですよ。でも、『ジョーズ』を観たら、「こんなに映画って面白くなるのかよ!」と「進化」するわけなんです。ボクはいつも心のなかで「今度こそ『ジョーズ』で得られた人類の進化を体験できるはず」と大げさでもなんでもなくそう思っているのです。もちろん『ジョーズ』は個人的な例えです。『椿三十郎』でも『悪魔のいけにえ』でも『ターミネーター』でも、それこそ『ダイ・ハード』でもいいんです。とにかく娯楽映画の中には、そういう「人類を進化させる」ことを成し遂げた映画が存在するわけです。


ボクはね『パシフィック・リム』にはそういう映画を求めていたんですよ。


これを無い物ねだりとは思いません。だって、デルトロはそういうポテンシャル持っていると思いますし、CGIに金はかかっても、シナリオを練ることや演出を考えることに金はかかりませんよ。時間と才能があって口出しするバカがいなければいい。


そして、これだけは断言してもいいんですが、


必殺技は一度きりだと観客に知らせておけ!!!


ってことです。

これがちゃんとしているだけでも「燃え」方が全然違うから。

あとさあ、

秘密兵器を観客に隠してどうするんだ

と。『タクシードライバー』の殴りこみで、トラビスの飛び出し拳銃がどうして燃えるのかちゃんと考えてみろ。



そんで、

ロボットに弱点をちゃんと設定しろ!!

ウルトラマンがどうして3分……


ロボットプロレスならちゃんとこれぐらい入れておけよ。


・・・


でもね、あれですよ。


タンカーは燃えた!!


カメラが移動して、ジプシーがズルズルとタンカーを引きずっているとわかった瞬間は激燃えました。それこそ「うおおおおお!」と。

要するにああいう「おおおおおお!」が何度何度も登場すれば良かったんですよねえ。

「そこでそうくるかよ!!」

ってやつですね。

それがないんですよ。この映画は……


次は是非日本を舞台にして、巨大ロボットバイクに乗ってスカイツリーを槍にして突っ込んできて欲しいもんです。