男たち、野獣の輝き

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Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

『007ゴールドフィンガー』を観ました

007初期三部作の三作目。当時としてはシリーズの三作目でこれだけの完成度を誇るのは凄いんじゃないでしょうか。それぐらい傑作。

子供の頃も大好きでしたが、今観直してもさらに面白かった。監督は前二作のテレンス・ヤングに代わってガイ・ハミルトン。余裕綽々とした演出で描かれるイギリスならではの上品な感覚は、初期007のルックスを決定づけている。が、続く『サンダーボール作戦』の大作路線志向において失われてしまった感じもするので、やはりこの初期三部作が特別な評価を受けているのも当然かもしれない。

ゴールドフィンガー』はとにかくシナリオがよく練られていて面白い。

ゴールドフィンガー自身のキャラクターもスペクターという巨大組織に頼らず、「ただたんに金(きん)が大好きなだけ」という一貫した目的に美意識が現れていて良い。

捕まえたボンドを殺さずにわざわざ黄金の机に拘束して工業用レーザーで真っ二つにしようとするシーンも素晴らしい。なんとか助かろうとするボンドに対して「話してなど要らん。死んで欲しいだけだよ」という名セリフを放つし、苦し紛れのボンドに対しても余裕満点にあしらう感覚は見事。
結局全員皆殺しにするくせに、ギャングたちに精巧なミニチュアまで作って作戦の説明をするシーンとか、プレス機で鉄の塊にした車に向かって「金をひっペがさなきゃならないから失礼するよ」と言ったり、ゴールドフィンガーと演じたゲルト・フレーベは、007映画では珍しいぐらいボンドとタメを張る悪役だ。


この作品は随所にサスペンスフルなシーンが用意され、それがことごとく巧くいっているのも見所。

特にクライマックスの原爆の時限装置のくだりは傑作。なんとか装置を止めようとするボンドが、苦し紛れにコードを切ろうとするが、それをパシっと叩いた手が静かにスイッチを切るのが何とも言えずクレバー。時計が「007」で止まるのはあまりにも有名。(試写会ではわざと「003」のカットを用意してそちらを使ったとか何とか)


悪役のゴールドフィンガーも大変魅力的だが、彼のお抱え殺し屋「オッドジョブ」も映画史に残る殺し屋だろう。前作の『ロシアより愛をこめて』に登場したロバート・ショウ演じるレッド・グラントに引き続いて、まったくタイプの違う魅力を造形したスタッフには敬服する。刃の仕込まれた山高帽という小道具もキチンとクライマックスで機能するし、「あ!あ!」としか言わない独特の言動もいいし、ジョン・バリーによる「チン、チーン……チーン」というトライアングルの音を使った独特のテーマも緊張感抜群。原爆とともに自分も金庫に閉じ込められても全く動じず、時限装置を止めようとする仲間を殺してボンドとの一騎打ちに望むムーブは超絶燃える。音楽がかからない格闘は当時ならではだが、ボンドに「立て」と無言で手招きしたところで、例のチーン、チーン……チーンがかかりだすのは実に最高。


ショーン・コネリーは一作目からすでに完全にボンドだったが、三作目の今作では緊迫した芝居なども披露し、まだキチンと役者としての本分を守っているのが美しい。ウエットスーツを脱いだら白いタキシードを着ていて、さらにどこからか取り出した赤いバラを胸にさすという、あまりにも有名な冒頭のシーンなんて、まさにショーン・コネリーだからこそ成立するシーンだ。あそこでズボンを脱ぐところを描写しないのが映画なんだよね。

主題歌も超有名ですよね。

初期三部作の銃口のオープングって、銃を撃つボンドがショーン・コネリー本人じゃないんでしたっけ。シネスコででかくなるから改めて撮り直したショーン・コネリーは、構えた時に体がフラつくという何とも情けないことに。でも、それがまた微笑ましいのがショーン・コネリーの強みだ。