男たち、野獣の輝き

旧映画ブログです。

Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

『OO7スカイフォール』★★★★

開始一秒で燃える映画

MGMやSONYピクチャーズのロゴなどが出て、さあ本編が始まるその瞬間。

チャーチャン!!

全人類の誰でもひとりの男を連想するフレーズが鳴り響くと同時に、フォーカスの合っていない男のシルエットが画面に現れる。

このアヴァン、いや序盤、いや冒頭、いや文字通り開幕の瞬間から一気に「OO7」という世界に引きずり込む演出。

このフレーズは二作目の『ロシアより愛をこめて』のガンバレルシーンから49年間「ボンド」という男の象徴として使われてきたテーマのイントロであり、僅か2音程度のフレーズにも関わらずその作品の世界観を観客の脳みそから引きずり出す効果を持っている。

それはこのシリーズが50年間に渡って世界中の人達に刷り込んできた結果でもあるし、その創作のすべてが詰まっていると言っても過言ではない。

Skyfall - トーマス・ニューマンSkyfall - トーマス・ニューマン

このフレーズを生み出した男、ジョン・バリーはもうこの世にはいないが、その業績はこうやって永遠に残っていく。

そして、ボンドのテーマも作品の中では要所要所で効果的に登場する。

中でも屈指の名場面は、ボンドが車を私用車に乗り換えるシーン。ここで流れるボンドのテーマに満場の観客がどよめいた。

このテーマを作曲したのはモンティー・ノーマン。このメロディも世界中で知らない人間は存在しない。

スカイフォール』は現代における最高水準の「OO7映画」だ。

「OO7」はジャンルである。

アクション映画とかロマコメ映画などと同様、OO7というジャンルがあるのだ。

簡単に言えば『ネバーセイ・ネバーアゲイン』はOO7というジャンルとして大変良く出来ているけれども、『カジノ・ロワイヤル』(旧作)はOO7ではない。

こうやって考えれば『スカイフォール』がOO7というジャンルとして極めてよく出来た傑作であることがよく分かる。

ロジャー・ディーキンスによる超絶美麗な撮影、スチュアート・ベアードによる古典的でありながらキチンとツボを抑えたスピーディーな編集、トーマス・ニューマンによるOO7のテイストを守りつつも作品に隷属したサントラ、サム・メンデスによる明確なストーリーテリングなどなど。これらは、どれもこれも今までのOO7映画には無かった要素ばかりであり、今回の『スカイフォール』が深読みされたり多くのOO7映画ファン以外に受け入れられたりしている要因にもなっている。ただし、上述した要素のすべてがキチンと「OO7」というスタイルの元に構築されている事を忘れてはいけない。


繰り返すが「OO7」はジャンルである。つまり、ロマコメを観に来た人たちはバッドエンディングを望まないし、燃えるアクションシーンなどは求めていない。アクション映画を観に来た人たちは辛気臭い説教は聴きたくないし、ダラダラとした人間ドラマなどは観たくもない。

OO7という映画は頑なにそのスタイルを守り続けてきたが、その中でこれだけの創造的な冒険を成し遂げたことは激賞に値する。

それぐらいこの作品は画期的なのだ。


<以下ネタバレ>


個人的に最も素晴らしかったのはラスト。

ダニエル・クレイグのボンドになってからの二作がどうにもこうにも「OO7」というジャンルとしてピンと来なかった理由が、

マネーペニーの不在とあのMの部屋が登場しなかった事だと分かった瞬間。

あのラストのOO7というジャンルへの回帰の巧みさ。実は前二作がシリーズ初の前後編だったことも、この作品のための布石だったとしか思えないような、どこまで計算なのか偶然なのか知る由もないし、そんなことはどうでもいいとも思える奇跡のようなエンディング。

50年もかけてメビウスの輪をグルグル回り、遂に出口に(入口?)たどり着いたような、ファンのみが味わえるご褒美のようなラスト。

このラストの感動を味わされてしまっては、これからはもう何をやってもいいように思えてしまうし、これで終わってしまってもいいようにも思える。

とはいっても、OO7はジャンルである。これからはひとつの上の階層で相変わらずの事をやってほしいと個人的には思っている。

ダニエル・クレイグが無表情で皮肉やジョークばかり言ってQの作り出す現代的に荒唐無稽な秘密兵器を使い捨て、行く先々で女にモテモテでその女は無慈悲に残酷な死に様を迎えるがボンドは知らぬ存ぜぬで最後はイチャついて終わり。そんなOO7をロジャー・ディーキンスの撮影とサム・メンデスの演出で観てみたいという欲求もあるわけですよ。


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