男たち、野獣の輝き

旧映画ブログです。

Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

『ルディ』★★1/2


努力こそが大事

さすがに大人になってくると、「夢を諦めないで」的な風潮が、エンターテインメント業界に蔓延る「搾取の手段」の一形態であり、巧みな情報操作だと気付いてしまいますが、若い頃にそういう希望を持って「努力」を怠らない(「精進」とか「修練」と言い換えてもいい)ことが大事だということも分かってくる。

だから、「地道に生きなさいよ」というルディのお父さんたちの言葉も分かるし、「いま諦めたら一生後悔するぞ」という親友の言葉も理解できる。別にどっちが正しいということでもない。「地道に生きる」というのも実は並大抵ではないことを今は知っているから。

アメフト映画というジャンルに属する今回の『ルディ』ですが、実は「夢に向かって突き進もうとする青年」が次々と挫折を味わう前半部分が素晴らしかった。正直いうと夢がかなってからの後半部分は類型的でそれほど感動するということもない。(それでも実に控えめで感動的なラストは実話らしくリアリティがあって素晴らしいけど)

その前半部分。主人公のルディ(演じているのは、『グーニーズ』のショーティというよりも、『ロード・オブ・ザ・リング』のサムであるショーン・アスティン)は身長が低くて体重が軽いという、アメフトには全く向いていない体格でありながら、根っからのノートルダム大学のフットボールチームファン。しかし、高校卒業時に学力が足りないということで学校見学ですらダメだしされる。そこから4年経つというのがまず驚く。

「あ、これは普通のスポ根じゃないな」と。

ルディが前半部分で味わう挫折は、まったくアメフトとは関係の無い、「学力」という壁なのです。

ルディが先生に「人間は神に与えられた能力に満足して生きていかなければいけない」と諭され、しょんぼりと肩を落として「4年後」ってなるのは、結構衝撃的でした。

そして、ルディは4年間夢を諦めきれないでくすぶりながら、お父さんの工場で一生懸命仕事をしてお金を稼ぐ日々。幼なじみの恋人からも結婚を迫られて新居まで準備されようとしている。「わたしがひとりで貯めたわ」と恩着せがましいことを言われるのが辛い。

『ルディ』の前半部分が通常のアメリカン・ドリーム物と一線を画しているのは、この生々しい現実の「障害」を緻密に描いているからではないでしょうか。

自分のことを一番理解してくれていた親友を事故で亡くして、「これじゃいかん」と行動を起こすルディですが、先ずは「恋人」が支援してくれない。ここでまず驚く。リアリティ抜群です。バスを待っているとお父さんが来て、「これを持って行け」と札束をくれるのかと思いきや、「やめとけ、地道に生きろ」とダメ押しの説教。大学に着いたら、早く着きすぎて事務局がやっていない(ははは)。
カトリック系の大学なので神父さんが相談に乗ってくれるが、「とりあえず下の学校で良い成績をとったら入学させてあげる」とていよくあしらわれる。
しかし、ここで『まんが道』よろしく、何人かの理解ある人がルディに助け舟を出してくれる。先ずは勉強を手伝ってくれるのが現役大学生のD-BOB(演じているのは『アイアンマン』の監督ファブロー)。彼がお金持ちのボンボンで勉強もできるんだけど女性と上手く話せない(でも彼女はほしい)っていう設定が面白い。ルディもそういうのは得意じゃなさそうだけど、取引に応じて一生懸命女性に声をかける。出来の良さそうな美人と友だちになりかけるが、大学生じゃないと分かると「規則に違反している」とクラブの入部を断られる(当たり前なんだけどかわいそう)。
とにかく、ノートルダム大学のアメフトチームに対しては、完全に「オタク」状態であるルディが一部の人間の心を揺さぶる。テレビばっかり観て、レコードでコーチの指示を聴きすぎて全部暗唱できてしまったり(イタイ)、ちょっとでも側にいたいから無償でグランドなどの整備員を手伝ったり(イタ過ぎる)、ロッカールームにくると仕事もせずに大はしゃぎ。こういった部分は「ルディの愛すべき一面」として描かれているものの、基本的には「オタク」としての側面をリアリティ満点に描いている。
その「オタク」のルディが、当たり前のように「学力」不足でノートルダム大学に編入できない。一生懸命勉強して無償でグランド整備をしてアルバイトもしているのに、何度も何度も落ちる。
挙句に、田舎に帰ってみたら、元彼女は友だちとくっついている。激痛!!

という風に、こういった現実の壁にさらされながら何とかノートルダム大学に編入できる訳ですけど、この前半部分の「挫折感」と「なんでうまくいかないんだ感」は、一度でも夢敗れた経験のある人間にとって感情移入するなという方が無理という作り。


そのすべてが神父さんも言っていたのですが、「報われることをのぞむな」って事なんですよね。報われたいから努力するわけですけど、実際には「努力」こそが大事なんですよね。あとはどうでもいい。で、「努力」した人間には必ず何かしらの結果がともなうものです。これは間違いない。何も得ていない人間は「努力」していないんでしょう。自戒を込めて書いておきます。ははは。


自己弁護しておくと、「オタク」は無意識に恐ろしいほど「努力」していると思いますよ。これが「無自覚」だから自他共に理解されないだけで、明らかに他の人間とは違う「何か」を大なり小なり身につけていますからね。みなさん「オタク」をもっと誇ろうよ!