『フライト・ゲーム』★★1/2
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パラノイアからの航空パニックサスペンス
『エスター』で一躍注目を浴びたジャウム・コレット=セラ監督は、続く『アンノウン』からリアム・ニーソンとコンビで作品を発表しており、これに続く『ラン・オールナイト』で三作連続です。
『アンノウン』もそうでしたが、セラ監督の持ち味は「パラノイア」風のサスペンス。主人公も含めてすべてに疑心暗鬼になるような不安感を演出させたら右に出るものはいないんじゃないかというぐらい、観客を不安な気分にさせてくれます。そして、リアム・ニーソンも「笑顔すら不安」というべき「何考えているのかわからない役者」の筆頭ですから、監督のモチーフに非常に適した配役といえるでしょう。
事実、この『フライト・ゲーム』も、中盤まで観客は「一体何がどうなってるのかさっぱり分からない」という不安感をうんざりするほど味合わされます。
なにせ共演がこれまた「不安が服着て歩いている」としか言い様がないジュリアン・ムーアなもんですから、不安の自乗効果が危険なレベルに達しています。ココらへんは同じようなパラノイア航空サスペンスの『フライトプラン』と違って、役者勝ちといえるでしょう。
ジュディ・フォスターは聡明なので、観客の共感を得やすい。
そんなこんなでこれって主人公の夢なんじゃないかとすら思わせる疑心暗鬼タッチがみなぎる前半から一転、もう監督が交代したんじゃないかと思ってしまうほど、後半は急転直下の「爽やかな航空サスペンスアクション」になります。
製作の一人に今は落ち目のジョエル・シルヴァーがいるあたりも不安にさせてくれますが、伏線の張り方などから考えてもシナリオ段階でこういう「前半と後半のタッチが違う」作品ではありそうです。多分に前半のタッチがセラ監督の持ち味に合いすぎていたのかもしれませんね。
とは言え、後半部分の「航空サスペンスアクション」の部分も嫌いではなくて、ずっと機内でカメラが動き回っていた密室劇とも言える前半から一転してカメラもアクロバティックに機外に出ちゃうのもご愛嬌。特撮部分が何時の時代だよ? と言いたくなるぐらいちゃちいのも苦笑モノですが、こういう「突然アクションしまくる」というスタンスは個人的に嫌いになれない。もっとも、大の大人が観て楽しむような映画でもない気がしますが、そこはやはりリアム・ニーソンが出ているだけで料金分のお得感はあります。
クライマックスの自由落下状態で発生した無重力の中を、飛びながら銃を撃つニーソンなんてお釣りが来るぐらいのカッコヨサですよ(中学生的に)。
オススメはしませんが楽しめます。
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繰り返しになりますが、航空サスペンス・アクションというジャンルでこの映画を超える作品はありません。