男たち、野獣の輝き

旧映画ブログです。

Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

キネマ旬報1975年 10月上旬秋の特別号 No.667

黒澤明の『七人の侍』との初めての出会いはシナリオでした。

今では想像できないでしょうが、黒澤明東宝で制作した作品の殆どは1990年代の最初にビデオ化されるまで、思うようには観られませんでした。なので、『用心棒』をビデオで観て、テレビ放送で『椿三十郎』を観た1985年から黒澤明にハマッた人間にとっては、まさに「幻の映画」状態なのでした。噂だけは読んだり聞いたりするのに、観ることが出来ないんですよ。この歯がゆさは実際に体験しないとなかなか味わえないと思うのですが、だからこそ観られたときの喜びは格別だったりしたんですね。
で、
当時は『七人の侍』は数枚のスチール写真と「最高傑作」という評判だけ。
ボクとしては何としても観たかったのですが、アメリカではビデオが発売されている事を知らなかったんですね*1
そんなとき、古本屋さんで『ジョーズ』公開直前のキネマ旬報を手に入れたんです。アメリカで特大のヒットをして、日本でも期待が高まっている当時の雰囲気をこれでもかと味わえる雑誌でしたが、実はこのキネマ旬報には『七人の侍リバイバル公開を記念して、シナリオが全編掲載されていたんです。『七人の侍』はベネチア映画祭に出品するときの規定で160分前後にカットされたバージョンがあり、今では考えられないことですがこのバージョンでしか観られない年月が長かったそうです。それが公開20周年(当時で!!)を記念して完全版のリバイバルが行われたんですね。
ボクとしてはなるべく事前情報を知らないで観るのが信条ですから、まさかストーリーが全部分かってしまうシナリオを読むなんて考えられない。
でも、
しかし、
当時のボクは数年後に広島映像文化ライブラリーで上映される事なんて知らないし、輸入で手に入れられることも知らないし、ビデオになるときに大々的にリバイバル公開されることも知らない。いや、知っていたとしても何年も待てるほど青春は長くない!

と言うわけで、最初は「ほんのさわりだけ……最初だけ……どんな風に始まるのかだけ……」


止められないんです。


たぶん映画を観ていてもあれは止められないですよ。


それぐらい無茶苦茶面白いんです。あの脚本は。読み物として異様に面白い。


七人の侍』をシナリオから先に読むというのは、今から考えれば大変貴重な体験だったと思います。シナリオを読んでいたおかげで、その後実際の映画を観たときには、通常映画を観るときとはまったく別種の感覚を味わえましたし、それが『七人の侍』でっていうのは、到底考えられない体験です。

「良いシナリオから駄作は生まれるが、悪いシナリオから傑作は生まれない」

*1:のちのち購入してすり切れるほど観直しました。英語字幕がすり込まれているほどです。