男たち、野獣の輝き

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Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

ディパーテッド

久しぶりにスコセッシ監督がバイオレンスを撮ったという意味では、さすがといわざるを得ない”痛さ”満点の弾着演出が堪能できました。VFXの発展にともなって人体欠損や弾着効果が恐ろしいほど精巧に描けるようになったわけですが、それらの効果が常に演出力に比例することも事実で、ここはスコセッシには一日の長というか意地を感じさせてくれます。1カットで弾着及び血飛沫が処理できるようになったとはいっても、彼のように”頭蓋骨を感じさせる”弾着演出は独壇場と言う感じで、サウンド・イフェクトの力が凄まじかったです。発砲音の乾いた感じと弾丸が肉体を突き抜ける感覚も引きの画の効果的な使い方やテルマ・シューメイカーとの阿吽の編集で見事な激痛感でした。

一方作品として観るとどうかというと、個人的にはスコセッシならではのアクロバティックなカメラワークを堪能することもなく(撮影はミハエル・バルハウスなのに!)、なんだかキチンと撮りましたという雰囲気が終始漂っていて、正直がっかりでした。ドラマとしてはオリジナルの『インファナル・アフェア』を観ていることもあって、さして驚く展開もない上に、「これはどうなの?」と言う改悪と感じられる点もあったのでこちらもガッカリ。

ディカプリオはいつも通り無理している感じが痛々しいし、ジャック・ニコルソンはいつも通りのジャック・ニコルソンだし*1マーク・ウォールバーグは変な髪形だし……。マット・デイモンは一人がんばっている感じですが、あの役柄には「なに考えているかさっぱり分からない」アンディ・ラウがあまりにも適役だなという感じです。まあ、オリジナルとリメイクを比較するなんて不毛で好きではないんですが。

改悪だなあと思ったのは二つ。

<以下ネタバレ>


先ずディカプリオの存在を知っているのがマーティン・シーンマーク・ウォールバーグの二人になっている事。これによって、マーティン・シーンの落下したときの衝撃が(後述する演出も含めて)薄らいでしまう。オリジナルでは、アンソニー・ウォンだけが知っていることを観客が知っているだけに、彼が中盤でイキナリ死んだ瞬間のトニー・レオンの絶望感がモロに伝わってきて感情移入はマックスになる仕掛け。ですが、こちらでは「まだウォールバーグがいるからなあ」と全然絶望しない。

加えて二点目として、そのマーティン・シーンの落下のショックが全然ない。オリジナルでは逃げようと外に出たトニー・レオンの目の前の車にイキナリ落下してくる、文字通り衝撃的演出で、観客は物理的な衝撃の効果でトニー・レオンの絶望感をそのもの体感できる見事な仕掛けだったのですが、ディカプリオの眼前に落ちて血飛沫が振りかかる処理は良いとしても、先のウォールバーグの存在とあわせて全然絶望感がない。ただ、上司が死んだと言うショックだけ。

このシークエンスに関してはオリジナルで一番衝撃的だっただけに、ここがスベってしまっただけでも正直がっかりどころか台無しでした。

*1:沼に沈めたはずの死体がすぐに見つかったことをくどくどと言い訳がましく愚痴る部下に対して、「今度からオレが沼に死体を沈めろと言ったら……見つからないように沈めろぉぉ!!!」と切れるのは最高。