男たち、野獣の輝き

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Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

トリフィド時代―食人植物の恐怖 (創元SF文庫)

トリフィド時代―食人植物の恐怖 (創元SF文庫)

トリフィド時代―食人植物の恐怖 (創元SF文庫)

以前書いたように、ボクが最初に読んだ本のシリーズにあった「怪奇植物トリフィドの侵略」。そちらは少年物として訳されていたわけですが、今回はオリジナルの完訳(といっても訳は何だかへんてこりんだった。「一日中」=「いちんちじゅう」ってそういうものなの?)

ウィンダムの代表的な終末SFで、本人も言っていたようにウェルズの「宇宙戦争」に大きく影響を受けている終末観が読みどころです。とはいっても、トリフィドは動く植物、宇宙戦争は絶対恐怖感抜群の殺戮兵器という具合に、恐怖の対象は全く違っています。トリフィドの本筋はやはり「流星群をみた人間は目が見えなくなる」と言う設定ですね。偶然それを逃れた主人公たちが、文明の終わりを迎えた世界を生き抜くという話ですね。解説に書かれていたのですが、ブライアン・オールディスの言うところの「オージー・カタストロフ=心地よい破滅」ってのが実に的確で、自分が好きな破滅モノはかなりこのジャンルになるように思いました。思えば「ゾンビ」などもかなりこの「心地よい破滅」モノになるように思います。世界は破滅にするのですが、主人公には彼女がいるし、空っぽになった(リセットされた?)世界が提供されると言う、正に心地よい破滅なんですよねえ。勿論現実にはごめんこうむるのですが、ついつい「いいなあ」と思ってしまうんですよねえ。

この「トリフィド時代」は子供の頃読んだ「怪奇植物トリフィドの侵略」に比べると、文明に対する主人公達の議論に非常にページが割かれていて、サバイバル物としての醍醐味は薄いのですが、逆にその部分が読み応えがあるのも事実でした。まあ、もっともただでさえ読むのが遅くなっているのに、文庫一冊読むのに1ヶ月以上かかったってのも……

追記:
28日後...特別編 [DVD]」の冒頭部分って、よく「死霊のえじき」と似ているって言われてますが、明らかにこの「トリフィド」を意識していますよね。病院で入院中に世界が終わってしまっていたり、病院を出てから徘徊するくだりとか。舞台がロンドンなので、イギリスのお家芸ともいえる終末SFの流れを汲んでいるのだと思います。あれのかなり陽気な破滅だったなあ。