男たち、野獣の輝き

旧映画ブログです。

Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

カンフーハッスル★★★1/2

予想以上にカンフー映画していて驚きそして喜び。

少林サッカー」やチャウ・シンチーの旧作から比べると明らかにギャグの部分が少なくなって、下品さもなくなってきたのもボクとしては好感度が高かったです。勿論チャウ・シンチーの旧作のそういう部分も大好きなのですが、カンフー映画としてはこういうアプローチがバランスとしては丁度いいです。

一番考えさせられたのは、チャウ・シンチー演じる主人公が最後のクライマックスまで全く活躍することがない事です。それは後述。

メインのストーリーラインは実は冴えないと思っていた人たちが実は達人だったという実に好みの設定で、ヨレヨレのシャツを着たおっさんや、ハゲのおっさんなどが突如暴力に対して立ち上がる場面はどれをとっても盛り上がりました。

敵の暴力団が送り込んでくる殺し屋達も個性的で、集団の雑魚→特殊武器の使い手二人組み→最強のカンフー使いと順番に強くなっていき、それぞれに主人公グループも強い使い手がやられては新たに強い使い手が立ち向かうというジャンプイズムあふれるパターン。

そして、先の話に戻るのですが、チャウ・シンチー演じる主人公がいよいよ最強の敵*1に立ち向かうんですが、チャウ・シンチーは実は如来天掌(うろ覚え)という技を体得している潜在的な達人だったという設定なんですねえ。

ここで、主人公がパワーアップする設定のパターンを分類したいんですが、

A.特訓

B.足かせを外して本来の力を発揮する*2

C.変身

まあ、大体これを様々に組み合わせたりしてパワーアップするのがパターンです。

一番オーソドックスで観客の感情移入もしやすいのがA.の特訓で、代表的なのは勿論ジャッキー・チェンの初期シリーズ。特訓自体のバリエーションが作品の面白さにも繋がりますし、子供の特訓魂にも火をつけますね。また、努力が報われるというのも非常に健全で好きです。

B.の足かせですが、これは一見特訓と同じことのように思えますが、主人公が意識していない=観客もそれほど意識していないことからくるカタルシスが素晴らしく、視覚的な分かり易さもあって使用頻度の高い手段ですね。「リングにかけろ」のパワーリストやパワーアンクルなど、子供なら一度は欲しくなった(実際に買った)経験があると思うだけに、侮れないですねえ。

そして、最後のC.変身ですが、これはもう一番安易で分かりやすい手段なんですが、努力を潜在的に嫌う多くの人々からは熱烈にもてはやされる手段ですね。視覚的にも分かりやすく、理屈としても分かりやすい。ただ、特訓している暇がなかったり、伏線を張る手間がなかったりする事から連載漫画ではとにかく多用されやすいですね。もっとも、週刊のテンポで読んでいたりすると、読者もそのテンポに巻き込まれているので、虚をつかれたような突発的な変身によるパワーアップは大いに盛り上がるのも事実なんですけどね。

「ドラゴン・ボール」はこのパワーアップのパターンをとにかく全編に使いまくっていて凄いんですが、ドラゴン・ボールをジャンプイズムの頂点と捉えるとチャウ・シンチーが自作に持ち込んだ「漫画性」を理解するのに丁度いいのかもしれないですね。(「少林サッカー」は主人公が最初から強いという点で、ジャンプイズムというよりはブルース・リーの影響がやはり大きいと思います。)

で、「カンフーハッスル」では主人公は最強の敵の攻撃を受けることでいったん仮死状態に陥った後、超人の力を解き放つわけですが、ここでの活躍する様がまさにブルース・リーであることです。チャウ・シンチーブルース・リーの信者であることは有名で、少林サッカーでも「雑魚の前に立っているだけでリー」という常人では考えられないような離れ業を見せ付けていた訳ですが*3、この映画では散々カンフーの達人が活躍する姿を描いておいて、最後の最後にブルース・リーが登場するという(しかも自分が!!)メタな構造を持っているんですねえ。チャウ・シンチーにしてみればしてやったりという感じじゃないでしょうか。まさに普通の人間がブルース・リーに変身するという願望を見事に映像化しているわけです。少なくともボクにはそう思えました。勿論CGやワイヤー・アクションによるアクロバティックなアクションはリーとはかけ離れているんですが、無表情*4から一気に爆発するように繰り出される技という部分にこそリーの思想が炸裂していてたまりません。常にリラックスしていて、攻撃の瞬間だけ爆発! 特に回し蹴り連発!李三脚炸裂!などは血が沸きあがりましたよ。

ああ、珍しく美人が酷い目に遭わないのもチャウ・シンチー作品らしくないというのも書き添えておきます。

*1:こいつですら初登場時にはバーコード頭にビーサン+丸めがね!しかも顔が小林勝也にクリソツ

*2:パワーリストを外す等

*3:どんなにブルース・リーの物まねがうまい人でも、それはあくまでも物まねで、チャウ・シンチーのソレは完全に憑依しているといったほうが良い。本物の風格。間違っても怪鳥音なんか叫ばない。ただ立ってるだけの立ち姿がリー!

*4:これもシンチーのお家芸ですが。