男たち、野獣の輝き

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Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

『イミテーションゲーム』★★★★

マーク・ストロング史上一二を争うマーク・ストロングぶり

評判の高さを知りつつ、近場の映画館でかかっていないというだけの理由で観るのを先延ばしにしていた本作。映画ファンとしてあるまじき根性なしな自分に、「でも、これは見ておけよベイビー」と言わんばかりのタイミングで、ふと近場のイオンシネマのスケジュールにのっかっていたのを知った時の喜びねw そして、映画の神に見放されてはいなかったのだと実感できるほどのド傑作でした。

アラン・チューリングについてはやはり「コンピュータの始祖ともなったチューリングマシン」の開発者ということと、それがエニグマの解読に用いられたというぐらいの知識はあったものの、同性愛者だったりそれを咎められたりということはまったく知りませんでした。


「Are you paying attention?」

から続く問答無用の口上から魂をグッと掴まれる。

一発でチューリングがどういう人物なのかわかるし、その第一印象が観客の中でどうやって変化していくのかも計算された見事な開幕。

ベネディクト・カンバーバッチの芝居も佇まいも、完全な的確さで観客にチューリングの人物像をエモーショナルに伝えてくれる。劇中親友に「暗号」の本を勧められるくだりでも、「会話」とどう違うのかという問答があり、それひとつとっても、チューリングと周りの人間との関係性が実によく伝わってくる。そして、「孤独」と「そうではない」ことの大切さも。

映画は「暗号機の解読」という物語になぞらえて、「正常」と「異常」、「普通」と「特別」といった「対立」と「共存」を見事に描き出していく。

要するに「はみ出し者」として扱われる人間が、どうやって「社会」という面倒極まりない「世界」で生きていくのかを描いている一連の映画と共通する題材であって、そういう題材に弱い人間としては涙なしでは観られない。

しかも、仲間に「りんご」を差し入れるエピソードと、そこで語られる「熊に出会った二人の男の小話」などをはじめとして、一つのことで同時に二つ以上の意味を込めるという実に質の高いシナリオが延々と満喫できる。

「機械=マシン=人工知能=正常ではない者」という実に自分好みのテーマも大きな枠組みで描かれ、それゆえに、チューリングと《親友》との関わりあいに対しても涙無くしては観られない感動的なエンディングへと収束していく。



然り而して、「映画」というものが、観ている人間にとって作り手から提出される「暗号」の集積であることも、決して考え過ぎではないと思わされる周到な作品だ。


・・・


それにしても、暗号システム設定の解読の糸口を掴んでからの燃えまくりの展開はヤバかった。そこまで「そういう映画」じゃない風を装っているだけに、ああいった王道な展開は素直に興奮するよね。個人的にも

「あああ、こういう瞬間のために映画を観ているんだな」

と再確認してしまう素晴らしさだった。



しかし、マーク・ストロングが『ゼロ・ダーク・サーティ』以上のマーク・ストロングぶりを見せてくれたり、贔屓のチャールズ・ダンスが安定の小癪な悪役を演じていたりしてキャスティングの部分でもかなり満足度の高い作品だったなあ。『暗号解析チーム』の面々も実に「それっぽい連中」勢揃いだったし。



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