男たち、野獣の輝き

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Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

ドラえもん 1 (藤子・F・不二雄大全集)(その2)

ドラえもん 1 (藤子・F・不二雄大全集)

ドラえもん 1 (藤子・F・不二雄大全集)

ドラえもんの大予言

あぶないっ!!

と言うわけで第二回目です。こんなペースで全話レビューできるのかしらん。


今回の『ドラえもんの大予言』も、てんとう虫コミックではそのまま第二話として収録されていたので、慣れ親しんでいるエピソードです。前回の第一話が基本的にのび太の家とその周辺だけで展開されていたのに対して、今回はしずちゃんの家へ遊びに行くという事で舞台が広がります。

後期のタッチで描き直されたタイトルバックのドラえもんが、本編の”初期ドラ”との対比で妙に和む。まあ、ページを1ページめくっただけで、初期ならではの「不安な」ドラが登場するんですけどね。

帰ってきて速攻で遊びに行こうとするのび太を巨大なマジックハンドが叩き伏せると言う、あまりにも無茶なオープニングが初期ならでは。

「二十二世紀のマジックハンド。」


「〜だよ。」とかの語尾もなく、ただたんに道具の名前を述べるだけの笑顔ドラが実に不安。居候してまだ日が浅いんでしょう、のび太も率直に

「へんないたずらよせっ。」


と、距離感たっぷりの返し。

セワシくんがいないだけで、こんなに不安にさせるドラえもんが、実に初期ならではで楽しい。

ここで、このエピソードのプロットを、ドラえもん『れいのアルバム』で示唆する。

この『れいのアルバム』は前回のエピソードで、のび太の心胆を寒からしめたあのアルバム

またまた、ジャーンと凄まじい写真をみせつけて、のび太に過剰なストレスを与えるドラえもん。お前なにしに来たんだよ。
(ちなみに、てんとう虫コミック版と違って、包帯でミイラになっているのび太の写真にスクリーントーンが貼られていません)

↑「全治一ヶ月の大けが!」と、「!」がついていますが、顔は勿論「無」ですよ。眉毛が若干同情してるかな。しかも、「もともと悪かった頭が、いっそうパーに………。」と、ドサクサに互い違いの目までしてコケ。汗だくだくで(互い違いの目で)びびりまくるのび太が哀しい。

アクシデントを未然に防いだ満足感だろう、漫画読みながらお菓子をパクつく初期ドラ。あろうことか、しずちゃんからの呼び出し電話に、まったく抗弁できず、けっきょく

「すく行くっていっちゃった。」


しかも、「おもしろいまんが」「とくせいケーキ」などにノセられて、まったくのび太のことなんか失念。ベロ出して。

不安。

のび太も正座で

「ぼくが事故にあってもいいのか!!」


と、まったく異論を挟む余地もない抗議をするが、正座で相対する初期ドラときたら、自分のやったことはすべて棚に上げての爆弾発言

「でも、約束はまもろうよ。」


こいつ……


もちろん、初期のドラえもんはドタバタギャグが基本であり、ドラ自身がその原因になるパターンなのですが、ここまで無茶苦茶な思考ルーチンは爆笑ですな。

で、ここからがこのエピソードの凄まじいところなのですが、歴戦の勇者であるのび太はすでにこの時に初期ドラえもんの不安さを察知していると見えて(まだ、信用していないと見るのが正しいでしょうが)、おかあさんに今生の別れとも言うべき挨拶をしにいくんですね。その大げささにママがビックリするんですが、「しずちゃんとこ。」へ行くだけだと分かる場面が最高。

↑この間! ママ笑いすぎです。


ドラえもんが無責任に「大げさすぎるよ。」と言ってますが、もう皆さんご承知のように、全然大げさじゃないんですね、これからの展開が。

ここからの交通事故=車が次々と襲ってくる波状攻撃は、初期ドラのドタバタギャグ真骨頂と言えます。二話目でこれですもん。

「しんちょうに行こう。」


と、わざとらしい真顔でタイムテレビを取り出したドラえもんが(おまえのせいだろうが)、ふたりの十秒後の姿を映し出して出発。


そこでいきなりコレ!


↑即死!!!



全治一ヶ月なわけない。もうF先生これだから面白過ぎる。”ダンプカーにはねられ”とか、伏線はっておいてコレ。

もっとよく見ると、タイムテレビで現れたこの2人なんですが、のび太ってかなり警戒してドラえもんの後ろに手を付いてついて行ってるんですよ。なのに、そののび太を狙い澄ましたようにこのダンプカーが突き出てきてんですよねえ。のび太の運の悪さときたらすごいもんがありますよ。ファイナル・デストネーション状態。



そんなこんなで第一の危機を回避した2人ですが、のび太が子どものミニカーを踏みつぶすという、あまりにも寸前の規模との違いが大笑いの事故に遭遇。地味に回避できてないあたりが笑えます。


そして、またタイムテレビ登場。もう条件反射で笑ってしまいますが、期待通りのコレ。

↑先に歩いてるドラえもんの後ろ姿、警戒心ゼロ!

お約束通り。しかも、ここでも車側を歩いているドラえもんの間隙を縫うようにのび太を襲う車が最高。

F先生の神髄が遺憾なく発揮されています。

そして、大爆笑のコレ

↑たたみかけ!

笑うに決まってます。

ここまできたら後はF先生の掌で踊らされるのみ。

道にこだわらないで、家を突っ切れば庭で車の練習に遭遇!
車の運転手さんに竹刀で叩かれる!(もうそんなの関係ないじゃんかナリ!)
とどめが、その家が急カーブのつきあたりで、ダンプカーがしょっちゅうとびこむ。

ドカン!

すごいテンションで次々に車が襲ってくる。ギャグのお手本としてはあまりにも高いハードル。

そして、F先生はそれでも終わらない。

↑描き足されたと思われる後期のタッチであるにも関わらず、異様にグルグルした目のせいでまったく信用できない初期ドラ。背後のぐんなりのび太が爆笑。「あるぞう」って。


ぜったい、安全なルートである屋根の上を進む2人。

「どうしてもっと早く思いつかなかったの。」「ばかだな。」


サラっとわざわざ別の吹き出しで無礼なことを言う初期ドラ。全部おまえのせいだ。

その顛末がコレ

↑「あぶないっ!」 はははははははは。


この車を絡める強引さが神業。ここでドラえもんが初めて身を挺してのび太を助けてますね。

でも、「家へ帰ろう。」と気遣うのび太に(友だちのところへ遊びに行くって言うだけでこれだけの目にあったんですからね)、初期ドラときたら

「けっきょくこうなる運命だ、あきらめな。」


と吐き捨てる。無表情で。


のび太顔面紅潮の激高で

「そんな無責任な!!」


おっしゃるとおり。


まさに、初期ならではの不安ドラでないと成立しないエピソードですが、デウス・エクス・マキナよろしく唐突にセワシくんが登場して、「ヘリトンボ」であっけなく危機を脱する2人。ドラえもん何にもしてない。タイムテレビ出して不安にさせただけ。

ところが、お約束と言うにはあまりにも驚愕のオチが。


↑これぞF!!

この衝撃ののび太が最高です。ガーンって凄まじい勢いで直撃してますもんね。

こののび太の凶悪な運の悪さ。

ただただ、交通事故というキーワードから広げに広げたドタバタの連続が素晴らしい。

一応「のび太の運命を変える」という初期ドラえもんの基本プロットを下敷きにしながらも、けっきょく全然そんな気がない展開がイチイチ面白い。

そして、この年度の読者は、何と続いて掲載される3月号でドラえもんとお別れ。たったの3話で。この読者の気持ちを切に聞きたいですよ。「どんな気持ちで読んでたの?」と。



なぜなら、この年度の読者にとって実質的な最終回となる次回作が、問題作「けんかマシン」だから…………



つづく