涼宮ハルヒの暴走 (角川スニーカー文庫)
- 作者: 谷川流,いとうのいぢ
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2004/10/01
- メディア: 文庫
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またまた長門が……
アニメ化された際にも、大宇宙艦隊戦のビジュアル化や、長門とパソコンとの出逢い(マウスを掲げる仕草の何と愛らしい事よ)、そして、団長のドロップキックが最高だった話です。
小説としては、PCゲームの内容を擬似的な艦隊戦として描くのではなく、キチンと皆が部室でモニターを前にプレイしているように描かれているのが印象的でした。
消失を読んだ後なのかどうかは分からないけど、長門が今回も大活躍をしつつ、キョンが長門を気にかけている様子が描写されるのが身もだえするほど良い。
あっきらかに作者の中で長門の存在が大きくなり始めているのを感じるし、それを臆面もなく作品に反映させるのは嫌いじゃないです。
今回の書き下ろし作品は、夏の『孤島症候群』とタイトル的には対をなすエピソードですが、いやいや作品としては実に気味の悪い逸品に仕上がっていて良かったです。明らかにマイクル・クライトンの『スフィア』を意識していると思われる箇所も多く、ファンとしてはニヤニヤしっぱなしです。
と言っても、白眉はやはりハルヒがキョンに突然「有希と何かあったの?」とふってから始まる会話シーン。あそこはドキドキしました。キョンも絶妙な嘘をついてまんまと危機を回避しますしね。また、キョンが長門を気にしているのにイチイチ目敏く気づいているハルヒも、それが実はキョンの事ばっかり視ていることを証明している点も相変わらず上手い。しっかし、SFやコメディを全面に押し出しながら、要所要所で恋愛劇が様々な形で顔を出してくるのは凄いですね。
そして、やっぱり(ちゃんと意味があるにしろ)、長門の部屋を訪れた幻の人物が「あなた」=キョンなのには胸が熱くなるぜ。
今回は長門がどんどん憔悴していく様が描かれて、ファンにはある意味応えられない。気を失うように倒れるとか、抱えられてベッドに横たえられるとか、もうあれですよ。
うわごとで「キョン」と言っていたとハルヒが言ったときには、「そんな馬鹿な!」とキョンたち同様、動揺したもんですが、案の定ちょっとしたミスリーディングが古泉によって明かされるのは楽しかったです。やっぱり「あなた」でないとな。
またまた一冊読み終わってしまったわけですが、やっぱり『消失』を読んでしまうと長門しか眼に入らなくなる気持ちを見透かされたような構成に驚きますね。次の『動揺』が早くも楽しみです。