天然コケッコー
製作発表から相当期待していた作品ですが、見事にその期待に応えてくれた傑作でした。
『リンダリンダリンダ [DVD]』で一気にメジャー・デビューを果たした山下敦弘監督ですが、今回も大きく飛躍しそうですね。なんつっても集英社のコミック雑誌に山下監督の名前が山ほど載っているのだけでも不思議な気分です。
今回はいつものコンビである脚本家向井康介は参加せず、渡辺あゆの恐ろしいほど見事に脚色された脚本を元に監督に徹しています。
くらもちふさこと原作の大ファンだという渡辺あゆさんは、原作の台詞をほぼ一切変更せずに連作短編であるエピソードを有機的につむいでいます。それでいながらフェードアウトを多用した山下監督のリズムとあいまって独特のペースを生み出していて心地良いです。
映画を観終わってみると、原作にあれだけ忠実でありながら、やはり山下監督ならではのリズムとムードが生み出されていて素晴らしかったです。
やはり、田舎を舞台にした癒し系のようにみせかけて、実は人間の機微を異様なまでに忠実に描くことでコメディにしているくらもちふさこのアプローチと山下監督のアプローチがかなり近いと思っていたので、それがちゃんとよい効果を生み出したということでしょうか。
くわえて、相変わらず炸裂する山下監督のキャスティングの凄さでしょうか。あれだけ”顔キャスティング”が見事にハマっているのも凄まじいです。1カットしか映らないカっちゃんのお母さんですら原作からトレースしたかと錯覚する激似ブリ。懸念だった佐藤浩市のお父さんもやたらとハマっていて嬉しかったです。
そよに抜擢された夏帆もイヤになるぐらい可愛いし(逆にそよの個性である無神経さは少し無くなっているのは残念ですが)、友達の伊吹ちゃんもあっちゃんも凄く良いです(あっちゃんの漫画『そよ風のあいつ』の生原稿まで登場!!)。子供たちのカっちゃんもさっちゃんも実に”らしく”て気持ちいいです。中でも特筆なのは修学旅行でやってきた東京で登場する広海の友達三人組。こいつらの中学生ブリはとにかく激笑必至!!
それにしても、『リンダリンダリンダ』に引き続いて、キチンと王道の演出を随所に見せてくれるあたりは、『グーニーズ』を愛する監督ならではでしょうか。