男たち、野獣の輝き

旧映画ブログです。

Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

涼宮ハルヒの動揺 (角川スニーカー文庫)

涼宮ハルヒの動揺 (角川スニーカー文庫)

涼宮ハルヒの動揺 (角川スニーカー文庫)

ライブアライブ

前後の話でも様々なエピソードが語られている文化祭。なかでも、キョンが実際に過ごした文化祭として語られるエピソード(小説内では北高祭は次の日もあるようで、そちらではキョンの母親と妹が来るという期待できる記述が)。
アニメでは相当意識されている山下敦弘監督作品『リンダリンダリンダ』ですが、原作が発表されたのは映画よりも半年以上前なのでプロット自体は先んじている。文化祭でバンド発表となれば、同年代の原作者のことなのでおそらく大林宣彦監督によって映画化もされた直木賞受賞作『青春デンデケデケデケ』。原作を読んでいるときには、少なからずこちらの雰囲気も感じられた。
何にしろ短編としては勿体ないほど文化祭というのは重要なイベントだと思うので、これから他にも発表される可能性は高いですが、バンド演奏シーンでの徐々に昂揚していく描写は、アニメとは正反対ながら小説ならではのダイナミックさがあって唸りました。
そして、これこそがメインともいえるエピローグ。アニメでも23分しかない本編の中で大きく時間を割いていました。ハルヒが初めて人に感謝されて戸惑うと言うエピソード。これはキョンの内面描写も相まって素直に「良い話」だなあと言う読後感がありますね。そして、それを忠実に(それ以上と言ってもいい)再現しているアニメも素晴らしい。
ページ数は短いのに文化祭の濃密な時間を見事に封じ込めている傑作でしょう。


朝比奈ミクルの冒険 Episode 00

”未曾有の世界”を観客に堪能させるSOS団製作の短編映画。メイキングともいえるエピソードは2作目の『溜息』で長編として描かれていますが(今考えたら、あれがなんで長編なんだろう?)、こちらはそれのケリをつけるかのような『本編』。
しっかし、あの笑激の短編にちゃんと原作があったなんて!
しかも、キチンとキョンが映画を観ていると言う設定で提示されるのが笑えます。逆に言うとアニメの短編は、キョンのナレーションが全編流れているから観ていられるとも解釈できますか。試しにそれのない音声バージョンもつけて欲しかった気もしますが、おそらくとても観ていられないんじゃないでしょうか。
ここまで何度もいろいろなモノを観てくると、この短編がおふざけのお遊び(いや、殆どそうだとは思うんですが)で完結しているのではなく、ちゃんとSOS団(中でもキョンについて)に対してのメタ的な設定や台詞が多く描写されている事に気づきます。イツキが(おそらくキョンについて)語っている小うるさい講釈や目配せ(笑える)など、伏線も含めて興味深い内容でいっぱいです。
アニメでは窓枠から足を踏み込んだ不自然な姿勢で台詞を言う長門のシーンも、小説では室内に転がって入ってくるのが笑えます。そういうのも観てみたい。
屋上で怒鳴り込んできた先生たちをどうしたのかも語られますしね。


ヒトメボレLOVER

そして、待ってましたとばかりに長門メインのお話が!!

しかも、現時点では時系列として『消失』直後にあたるエピソード。

キョンの中学時代の同級生が、長門に一目惚れしたのでおしゃまなキューピッドになってくれと電話で頼んでくる。5月、キョン長門と図書館へ行った時に見かけて惚れたと言う回想から、あのエピソードがリフレインして悶絶。最初観たり読んだときにはただただ微笑ましかったエピソードですが、『消失』や『憂鬱』のラストを踏まえると一気に最重要エピソードになってしまっているんですよねえ。
擬似的にとはいえ、キョン長門と部室で二人きりになり、告白までするという、美味しすぎるサービスまで。
(嬉しいことに)キョン長門以外のキャラは大きく絡まないで、殆どが二人きりというのもたまらなくて、キョンが何気に電話で連絡を取っているんだとか、わざわざ公園に呼び出して二人で話をしたりするとか。
ラストもまた、長門の一言で終わり、それが読後の余韻を強くする。
これもまた傑作です。