男たち、野獣の輝き

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Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

『永遠の0』★★★1/2

ボクは基本的に山崎貴監督の作品と相性が非常に悪い。歯に衣着せぬ言い方をすれば「大嫌い」です。観客に媚びへつらったお泣かせ頂戴の凡庸な演出と、どこかで観たことのあるアイデアや映像の何のひねりもない右から左感が胸糞悪いからです。

それでもデビュー作の『ジュブナイル』なんかは結構楽しく観ていたのですが、あれも二次創作のドラえもんの最終回をネタにしながら、F先生に捧ぐとかやらかしてくれてましたし……

ただ、嫌いは嫌いでも題材は人のツボをつくようなものばかり選ぶので、癪に障るけど一応全部観てるんですよねw

で、今回の『永遠の0

文庫本が恐ろしく売れていることも知っていますが、当然読書障害なので読んでいません。読んでいる妻の感想は「ぜんぜんひねりがなくてそのまま。あんまりおもしろくなかった」

おそらく、この妻の感想が念頭にあったからだとおもうのですが、観る前はこれっぽっちも期待していませんでした。上述の理由もありますから。

ただ、観放題のパスポートがあるので、「ゼロ・グラビティばっかり観てちゃいかん」とやっとこさ観に行ってきた次第です。


ところが、


これが、結構面白かったから始末が悪いw


いや、随所にお約束のように狙い過ぎのお泣かせ描写もあるんですが、過去のシークエンス=太平洋戦争の場面になると妙に画面に引き込まれてしまうんです。

もともと役者としての岡田君がけっこう好きなのもあるんですが(『タイガー&ドラゴン』の大ファンなので)、他の役者さんたちが揃いも揃って日本軍ヅラしてるんですよねえ。逆に岡田君が浮くぐらい。

もちろんこれまた「どこかで観たような」映像がちょこちょこ出てくるんですが、それでも「これは!」という望遠レンズをきちんと意識したカッコイイ映像が出てくるんですよね。ゼロ戦ウェザリングも何とも素晴らしいし。

かとおもいきや、現代の子どもたちが話を聞き、過去の話と交錯させるという『タイタニック』のスタイルを芸もなく踏襲している語り口はハッキリいって陳腐極まるんです。現代のパートなんてどこをどうみてもつまらなくてあくびが止まらない。

山崎貴は本当に普通のドラマ部分を作る能力が根本的に欠けている。

こんなにボロクソに書いておいて何なんですが、終盤で同じ映像を二度使って視点のパラレルな描写を行ったり、冒頭の部分がラストにつながったりという部分で単純に胸がグっとなってしまうんですよ。根が単純だからw

佐藤直紀の音楽も妙にグッと迫ってくるんで、ラストの特攻シーンが大いに盛り上がる。

実は盛り上がるというのは失礼な話なんですけど、個人的にあのラストの笑みは、「生へのしがらみを振りきって、遂に思う存分ゼロ戦乗りとしての悪魔的操縦を敵にぶつける事ができる喜び」だと解釈しています。多分作者の意図とか製作者の意図はまた別なんだと思うんですけど、それぐらいあのラストの岡田君の笑みと、対空砲火をくぐり抜けてから急上昇をかまして垂直降下を試みるあの特攻は燃えますよ。砲身の仰角が足りないから応戦できないんですよね。

というわけで、山崎貴監督作品としてはまさかの大当たりで、大いに楽しんでしまいました。