男たち、野獣の輝き

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Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

『世界にひとつのプレイブック』★★★1/2

デ・ニーロをキャスティングするという意味

ジェニファー・ローレンスがアカデミー主演女優賞を受賞したから観に行ったかのようなタイミングで行って来ました。前から観たかったんだからね!

ただ、そう思われてもまったく問題ないと思えるほどジェニファー・ローレンスは魅力的でした。どうしてあんなに魅力的なのか不思議で仕方ないですな。

まったく個人的な話になるんですが、僕は子供の頃すっごい癇癪持ちでしたので、ブラッドリー・クーパー演じる主人公にえらい感情移入して観ていました。もちろん切れる原因がまったく違うんですが、切れてしまうことに対しての自己嫌悪とか、周りとの気まずい感じなんかがすごく共感できるんですね。今でも精神的にはブチ切れていることは多いんですが(喫煙者に対してとかね)、切れてしまう事による精神的疲弊やエネルギーのコストがまったく割に合わなくなっているので、特に表面化はしないんですけど。

とまれ、映画自体の「視点」も主人公に寄り添った作りになっていて、フォーカスの不安定さ、手持ちによる不安定さ、ジャンプショットなどの編集の不安定さ、意味のないパンアップやすきあらば回りこんで主人公の後頭部を映し出すカメラなどなど、中盤まで常に主人公の「不安定」さを映像で体感させていきます。照明なども含めて撮影がいいなあと思ったら、なんと『ザ・グレイ』でも抜群の撮影を披露してくれたマサノブ・タカヤナギ。お見事です。

ただ、基本的に一人称視点として展開する構成なのですが、時折視点が外れてそれぞれのキャラを描写したりするのが少し引っかかりました。シナリオ自体の描写が時折不十分に感じるところがあるのですが、これは一人称視点による構成なので納得が出来てる分、その不徹底さが少しだけ気になったのです。とは言っても後半部分になるとそれも全然気にならなくなるので、まあ、そんなに重要な問題ではないのでしょう。

それぐらい終盤からの展開は王道で痛快、それでいて意外にハラハラドキドキさせられ、最後は満面の笑みで心の底からガッツポーズをとってしまいました。こんなに幸せなのは結構久々の映画体験。

そして、最初は「あ、また出てるのね」ぐらいにしか思っていなかったデ・ニーロ。彼のキャスティングが非常に良かった。

何と言っても「切れさせたら」映画界の中でも「ジョー・ペシかデ・ニーロか」と言われるほどの存在。彼が父親というだけで「病気じゃなくて遺伝じゃないの?」と余計な不安を画面に充満させる説得力がたまりません。明らかに病気の躁状態うつ状態といったブラッドリー・クーパーとは違って、一挙一動が「いつ切れてもおかしくない時限爆弾状態」の芝居が炸裂。