男たち、野獣の輝き

旧映画ブログです。

Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

『ジャンゴ繋がれざる者』★★★★

サミュエル・L・ジャクソンの有効活用

待望のタランティーノ新作を観て来ました。

クレジットのフォントから突発的に使用されるズームの多用などなど、さすが『ジャンゴ』をタイトルに掲げているだけに、マカロニ・ウェスタンへの目配せが連発なのですが、基本的なルックスはロバート・リチャードソン撮影による現在のタランティーノのそれがしっかり保たれているのはさすが。様々な過去のジャンル映画のモチーフを丁寧に再現しつつも、頑強に独自のスタイルが出てしまうのは、やはり作家性と言わずしてなんと言おうか。

クリストフ・ヴァルツが演じるドイツ人賞金稼ぎ(元歯医者)のキング・シュルツが直ぐに登場してジャンゴと行動を共にする鮮やかな序盤、そしてその件が終盤のジャンゴの言動とリンクすることで、その変化と成長を描写し、しかも、それによってテーマそのものへの言及が説明を廃して伝わってくる素晴らしさ。タランティーノのシナリオは一段とクオリティを上げていて、相変わらず鉄板の「ロマン」が充満しているのに胸が熱くなる。

ジャンゴとシュルツの関係だけでも十分鑑賞料の元は取れるのに、そこへ(実はほとんど期待していなかった)ディカプリオのハマリにハマった名演や、意外過ぎる伏兵サミュエル・L・ジャクソンまで登場し、中盤以降の油断できない展開もタランティーノ節炸裂。スピルバーグは演出面で油断の出来ない空気を生み出すのに長けているが、タランティーノはシナリオの段階ですでに油断の出来ない空気を作り出しているのが凄い。

しかもサミュエル・L・ジャクソンに至っては明らかに面白すぎるキャラクター造形に加えての恐怖感とクソ野郎ブリを同居させる盤石感。タランティーノ委ねてるなあという。特にラストでみんなと一緒に抜け抜けと出て行こうとするに至っては観客全員が「お前が行っていいわけねえだろうが!」と突っ込まずにはいられない素晴らしさ。登場した時は彼とは分からないけど、声を聞けばすぐに分かるメイク。そんなもんでは押し隠せない世界にひとつの眼力。

このポスターどこに貼るのを想定してるの?

そして、期待していなかったディカプリオが意外や意外な悪党ブリと、タランティーノキャラを炸裂させているのに驚かされる。実質的な登場シーンはそれほど長くはないだけに、強いインパクトを残す。彼のキャラが実際には奴隷制度というシステムにのっかっただけの「ボンボン」であることを差し引いても、どうでもよすぎる骨相学に関する蘊蓄披露なども含めて「何なんだお前は?」感が炸裂。


今までもマカロニ・ウェスタンの音楽をちょこちょこ使ってきたタランティーノが、いよいよ大手を振って(?)ガンガン使いまくるサントラがまた最高。

有名な『続・荒野の用心棒』の主題歌は鉄板として、個人的には『怒りの荒野』のテーマが流れるジャンゴの訓練シーンに胸が熱くなった。


ウクレレで弾ける唯一の曲がこのテーマというぐらい好きな曲です。もちろん映画もマカロニ・ウェスタンの中でも強烈に好きな作品です。


そして、やはり、どうしてもクライマックスの銃撃戦が燃えまくり。

キル・ビル』でもバトルアクションを見事に仕上げ、『デス・プルーフ』でも絶叫モノのカーアクションを作り上げたタランティーノなので、西部劇ときたら当然銃撃戦をやってくれるだろうと思っていたのですが、よもやあそこまで燃えるシーンをつくり上げるとは。2時間以上タメにタメた弦が解き放たれた瞬間のカタルシスたるや尋常ではなく、しかも、西部劇でありながら近代的な銃撃戦のテイストを持つ「カッコイイ」アクションは出色の出来。あの時代の不必要に殺傷能力の高い銃弾の威力が生み出す血飛沫と人体欠損を、ロバート・リチャードソン得意のトップライトによるギラギラショットで見せまくる。人体を貫通した弾丸が次々と背後の物を貫通していくカットなどは鳥肌が立つほどです。

ここからの展開もタランティーノならではの意外性あふれたもので、そこから見事に大逆転という流れはビックリするほど面白い。しかも、いきなり登場するタランティーノ本人とその扱い。ゲイリー・オールドマンがやらないなら俺がやるしかないとばかりのあの死に様! 美味しいところ持って行きすぎなんだよ。

最後になったけど、主演のジェイミー・フォックスの芝居は最高でした。あの総ての怒りを内に秘めた目の迫力は『イングロリアス・バスターズ』のイーライ・ロスに匹敵するね。単純に立ち姿がカッコイイしね。


超オススメです。


ジャンゴ 繋がれざる者~オリジナル・サウンドトラック
サントラ リック・ロス サミュエル・L.ジャクソン エリーザ・トッフォリ ジェームス・ブラウン ジョン・レジェンド ブラザー・デジ ジェームズ・ルッソ アンニーバレ・エ・イ・カントーリ・モデルニ ルイス・バカロフ
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