男たち、野獣の輝き

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Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

『レ・ミゼラブル』★★★

レ・ミゼラブル~サウンドトラック
サントラ ラッセル・クロウ エディ・レッドメイン アマンダ・セイフライド サマンサ・バークス ヒュー・ジャックマン アン・ハサウェイ イザベル・アレン サシャ・バロン・コーエン アーロン・トヴェイト ダニエル・ハトルストーン
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なぜか眠くなる

家の奥さん曰く「アクション映画はアクションになると眠くなる」というものがあります。実際、家でアクション映画を観ていると、アクションシーンあたりで寝落ちしていることが多いです。では家の奥さんが眠くならないアクション映画とはどういうものかと分析してみた結果、「アクションシークエンスでストーリーが停滞していないこと」が重要であることが分かりました。アクション映画の醍醐味はもちろん「アクション」そのものであって、実際にはそれがストーリーに関係なくてもいいんですが、ストーリーが停滞していないことが重要な要素であることも事実です。

転じて、ミュージカル映画ではどうでしょう。この場合メインは当然「歌唱パート」になるでしょう。アクション映画におけるアクション。ミュージカル映画においても、「歌唱パート」でストーリーが停滞しているものとしていないものがあるようです。ミュージカル映画の「歌唱パート」にも幾つか種類があって、ダンスが延々続いたり、心象表現を歌にしてみたり、単純に会話そのものを歌にしてみたり、これはそのまま、カーチェイスだったり銃撃戦だったりサスペンスシーンだったりというふうに置換可能です。

今回の『レ・ミゼラブル』はどのパターンかというと、実は「全部歌唱パート」という驚きのパターンでした。まあ、そういったミュージカル映画も無くはないんですが、個人的にはあまりお目にかかったことがなく、「台詞」の部分は恐らく4行ぐらいだったんじゃないでしょうか。

ここで分かってくるのが先述した奥さんの言葉でもわかるように、結局「そういうものが好きかどうか、そういうパターンに慣れているかどうか」なんだろうと推測されます。要するにアクション映画ばっかり観ている人間にしてみたら、ストーリーはアクションを載せるピザの下地ですし(つまり、美味しさがそれを左右する意外に重要な要素)、ミュージカル映画においてもそうなんでしょう。

で、

ここからが本題。

だったら、今回の『レ・ミゼラブル』をお前はどうだったんだ? と。

これが非常に複雑な結果だったので報告したいんですね。

結論から言うと、「ストーリー」は続きが気になる展開で意外に先が読めず(原作は子供の頃読んでいるし、読んでなくても大体知っているでしょう?)実に立派な基本フォーマットとして十二分に素晴らしいものです。「歌唱パート」もどれもこれもいい歌ばかりで横っ面を張り倒されるようなエモーショナルで感動的な歌が連発します。アン・ハサウェイの歌やヒュー・ジャックマンの歌などは思わず涙腺が緩むほど。実際に現場で歌った声を同時録音で使うというなかなか前代未聞な試みがなされているようで、果たしてその結果は強烈に画面に刻み込まれています。喉や舌の動き、唇の震えなどなど実に躍動感が凄い。かつて『マイ・フェア・レディ』でヒギンズ教授を演じたレックス・ハリソンが初めて同時録音で歌を収録したことがあります。当時珍しい小型のピンマイクを使って収録したそうです。現代では台詞のアフレコも多いご時世ですから、これはなかなか画期的な手法ではないでしょうか。

ところが、これがもう途中から眠くなってしかたがないのです。

どうしてなんだろう?

と思ってはたと思いついたのが上記の「アクション映画では」という置換。

つまり、この『レ・ミゼラブル』は、ジョン・ウーの映画のように全編銃撃戦だけで構成されたアクション映画なんですよ。ストーリーが熱すぎる点も偶然なのか似ています。で、そういう銃撃戦だけのアクション映画に慣れていたり、好きだったりすると大興奮して観ていられるのかもしれないのですが、家の奥さんのように銃撃戦なんてまったく興味が無い人間にしてみたら眠くてしかたがないという。

要するに、ボク自身がこういうパターンのミュージカル映画に慣れていないしそれほど好みではなかったんだという事に帰結しました。

多分傑作なんですよこの映画。それはよく分かります。ヒュー・ジャックマンの熱演や意外にラッセル・クロウなんかも良かった。

でもさあ、ジョン・ウーの映画でも銃撃戦の合間にちょっとはドラマ部分があるわけで、それは緩急なんですよ。そういう意味ではもうちょっとバランスをとったほうがいいんじゃないの? とは思いましたね。