男たち、野獣の輝き

旧映画ブログです。

Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

『ホビット 思いがけない冒険』★★★★

予想以上のヌルヌル感

観る前は「また3時間近くもあるのかあ……三作に分けたんだから90分ぐらいにすればいいのに……」と正直うんざりしていたのですが、観終わってしまうと「はよ、続きを!」となってしまう傑作でした。

ピーター・ジャクソンはかっちりと『ロード・オブ・ザ・リング』を観てきたファンのために、その前日譚である原作を映画化しています。

何よりも僕が気に入ったのは、ロード・オブ・ザ・リングには希薄だった「冒険」の感覚が全編にみなぎっていることでしょうか。『旅の仲間』の序盤部分が大好きな人間としては、その部分が全編に拡大されているという感じでたまらないものがありました。

今回の主人公ビルボは、フロド同様殆ど無理やりガンダルフに冒険に誘われてしまうのですが、こちらはちゃんと自分の意志で冒険に乗り出しているのが頼もしい。そして、フロドが終始冒険を楽しんでいないのと違って(そりゃ、そうだ)、ビルボはぶつくさいいながらもどんどん冒険に心を躍らせているのが実に楽しい。もっとも、原作はそこら辺がもっと強調されているのですが、映画版は少し抑えられていたのが残念。それでも十分楽しい気分にさせてくれるのは、ニュージーランドの風景(中つ国の風景)や、ピーター・ジャクソンの陽性の演出が冴えているからでしょう。

ロード・オブ・ザ・リングを一段上の次元に押し上げていたハワード・ショアのサントラが、今回も大盛り上がりしてくれているのも嬉しい。それぞれのモチーフを散りばめながら、ドワーフのテーマとも言うべきメインフレーズが何とも耳に心地よく、しかも燃えさせる。

髭面のデブが13人と天然パーマのチビ、そして爺というおおよそ現代では訴求力の弱いパーティーなのですが、それをまったく改変すること無くそのまま使用しているのもピーター・ジャクソンの実績があったればこそですし、ファンしか対象にしていないのですからそれで大正解です。

というわけで、案の定日本では大コケ確定のムードですが、観たかった人間の要望には必要以上に応えている傑作です。

・・・

さて、今作が映画史の中でも重要なのは、メジャー作品で初めて「HFR(ハイフレームレート)」を採用したことでしょう。HFRとは従来1秒間24フレームだった映画を倍の48フレームで撮影製作上映できるシステムです。テレビが1秒間30フレームなので、テレビよりも動きがヌルヌルしています。巨大なスクリーンで実にテレビ的なヌルヌル感が見られるわけですが、これには賛否両論渦巻いております。なんといっても100年近く24フレームとして慣れてきたので、映画=24フレームの映像として認識されているわけです。逆に言うとフレームの多い映像はテレビ的とイメージが植え付けられています。ビデオで撮影された作品はどうあがいても映画には見えないのがその理由。そこに来てあえてもっとヌルヌルさせてやろうというのですから挑戦的というか無謀というか。

案の定作品は「映画」を観ているという感覚は乏しく、ぶっちゃけ異様に綺麗なテレビドラマのような感覚を受けてしまいます。

ただし、3Dでの製作では通常なら欠点ともなってしまう、「風景などのミニチュア感」が、このファンタジーという題材に実にしっくりハマっているのです。ロード・オブ・ザ・リングが目指した「リアリティのあるファンタジー」とは違い、今回は丁寧に作りこまれた「作り物」の世界観をより強調することで、「ホビットの冒険」らしさを表現しているようです。HFRも個人的にそれに大きく貢献しているように感じましたので、他の映画でこれが採用されたらどうなるのか保留とはいえ、このシリーズに関しては大いにアリだと思いました。


それにしても今回は上映フォーマットが多岐にわたっています。

HFR IMAX 3D 字幕
HFR IMAX 3D 吹替
IMAX 3D 字幕
IMAX 3D 吹替
HFR 3D 字幕
HFR 3D 吹替
通常の3D 字幕
通常の3D 吹替
2D 字幕
2D 吹替

全部で10種類!

今回はHFR3D字幕を二回観ましたので、あとHFRIMAX3Dの吹替と2Dの吹替ぐらいは観ておこうと思います。


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