男たち、野獣の輝き

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Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

シネスイチ板橋プログラム31『ランボー怒りの脱出』

土砂降りの中でハチマキを締め直したくなる映画第一位

80年代前期。映画はすべてランボーだった。

82年に公開された一作目は、アメリカではそこそこのヒットだったが期待通りの成績ではなかったそうだ。しかし全世界では(特に日本。理由は後述)大ヒットを記録し、映画自体の完成度と相まって幾つかのベトナム戦争後遺症映画にかこつけたアクション映画を量産することになった。そして、何よりも「たった一人で戦争をおっぱじめる」というプロットの発明に、全中学生が熱狂した。そう考えると早川版の原作邦題『一人だけの軍隊』は絶妙だったといえる。タイトルがそのままコピーになっている名タイトルだ。原題は『ファースト・ブラッド』、面白くもなんともない。映画でも同じタイトルだったので、日本の配給会社である東宝東和は、主人公の名前がランボーであることに目をつけて、語感が「乱暴」と同じだからアクション映画に向いていると考えたのだろう、そのまま『ランボー』にしてしまった。しかも、チラシやポスターはお約束の「盛り盛り大会のてんこ盛り」で、マンハッタンや大量の兵士たちを配置した。


結果日本で大ヒットを記録し、アメリカ本国から表彰されたとか何とか。

その証拠として、この第二作では原題にも大々的に『RAMBO』と表記され、しかも記録的な大ヒットをかっ飛ばした。

タイトルが既に炎ってあたりが最高。ジェリー・ゴールドスミスの檄燃え音楽にのってこのタイトルが出た瞬間からテンションはマックス!


ちょっとしたムーブメントだったはずのベトナム戦争後遺症映画が、この映画によって決定的にミリタリー映画やガンアクション映画が雨後の筍のように量産されることになり、ちょうどビデオの普及と相まって一大カテゴリーを形成することになる。この手の映画の需要は中学生が存在する限り絶えることはなく、結果現在も手を変え品を変えて量産され続けているのだ。

この映画の脚本はジェームズ・キャメロンによって書かれている。スタローンが改変した部分も多いと聞くが、観れば一目瞭然のキャメロンテイストが色濃く残っている。この一年前に公開された『ターミネーター』から始まる銃器アクションのムーブメントがこの映画のヒットを後押ししていることは言うまでもなく、キャメロン自身が『エイリアン2』で絶頂を極める事になる。

前作では相手がアメリカ市民であり、警察や州兵などであることからランボーは当然一人も殺すことはない。それは職業軍人には許されない。しかし、今回の敵はすべて職業軍人なので、ランボーも遠慮なくブチ殺しまくる。このカタルシスはすごい。一人だけで戦っていたランボーは過去に凄い軍歴を持っていると劇中では語られていたが、その本領が眼前に繰り広げられる様にとにかく熱狂した。


エクスペンダブル宣言。もちろん『エクスペンダブルズ』のタイトルの元ネタだ。


サンドイッチを旨そうに食べる今は亡きチャールズ・ネピアー。アルミホイルに包まれたサンドイッチの美味そうなこと。


前半のクライマックスである船上の蜂の巣アクション。機関銃で蜂の巣にされる船内で必死に耐えるランボーに、全中学生の「蜂の巣願望」が目覚めた瞬間だ。この願望の到達点は『プライベート・ライアン』の冒頭で絶頂を迎え、その願望充足はFPSゲームが担っていく事になる。

助かったと思って脱出しようとした瞬間、生き残っていた敵の兵士に首を吊るされて大ピンチという展開はまさにキャメロン節とも言えるしつこさだ。


『007オクトバシー』『ビバリーヒルズ・コップ』に続いて毎年悪役として登場したスティーヴン・バーコフ。この時代悪役はすべてバーコフだった。


チャールズ・ネピアー扮するクソ野郎マードックに、この世のものとは思えないようなドスの効いた声で叩きつける脅し文句。

言われた顔。

この直後にかかり始めるものすごいテンションのジェリー・ゴールドスミスの曲がとにかく燃える。現在でもテレビで多用されるので誰でも一度は聞き覚えがあるはずだ。


ランボーを手助けしてくれた女性エージェントコー・バオとの涙の別れ。名カメラマン、ジャック・カーディフによるフィルター処理の映像が悲しさを際立たせる。


そして遂にブチ切れたランボーがナイフを鞘に差し込み、土砂降りの中でコー・バオの服で作ったハチマキを締める。前半の名シーンである《戦闘準備》では、結局役に立たない装備を入念に準備するランボーだったが、ここではナイフとハチマキのみ。それでもマードックの憎たらしい「奴は故郷(地獄)へ戻ったんだろうよ」というセリフからこれ以上ないタイミングで切り替わり、同時にジェリー・ゴールドスミスの超燃え音楽がかかり始めるこのシーンのテンションは並大抵ではない。全中学生が魂にハチマキを締め直した瞬間だ。


憎きコー・バオの仇を見つけたランボー。拳銃で撃たれているのも意に介さずに悠然と矢を弓に番える。爆弾付きのな!

拳銃に弾は残っているのに、ランボーの迫力に気圧されて逃げ始める敵の部隊長。このあたりの理屈を超越した燃え加減は圧倒的だ。ゴールドスミスの音楽もどうかしているんじゃないかと思えるほど燃える。


この映画は数多くの二番煎じを生み出し、同様のアクション映画を数多く排出した。中には傑作も数多いが、その他の凡作との決定的な違いは撮影のジャック・カーディフによる迫力とスケールの大きな撮影、ジェリー・ゴールドスミスの音楽、そしてマーク・ゴールドブラッドによる超絶編集だ。


期待を微塵も裏切らない風貌。言うまでもなく右側の男がゴールドブラッドだ。


「蜂の巣シーン」「戦闘準備」「土砂降りのハチマキ」などなどゴールドブラッドとゴールドスミスによる映画芸術はとにかく必見の素晴らしさ。

その証拠にこの二人が絡んでいないコスマトスの次回作『コブラ』のクオリティの低さは目も当てられない。(あれはあれで面白いけどね)


興行成績とは裏腹に作品としての評価は低いとされている本作だが、ぜひとも再評価して欲しい傑作である。


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ジェリー・ゴールドスミスの傑作サウンドトラック。本編で聴くと神業のようなスコアリングが堪能できる。