男たち、野獣の輝き

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Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

『127時間』★★★

望みどおりのサバイバル映画

個人的にはダニー・ボイルは信用の出来ない監督です。どの作品も革新的ぶった演出を多用してせっかくの題材を「惜しい」デキにしてしまう監督というイメージです。『28日後…』とかは大好きですが、アレも後半はグダグダでした。

もちろん、ああいった落ち着きのない演出は彼の持ち味ですし個性でもあるので、そこは合う合わないという事になるのでしょう。


そういう訳で今回の『127時間』

誰も来ない大自然の峡谷で、岩に片手を挟まれてしまった主人公が127時間悪戦苦闘して奇跡の生還を果たした実話。

プロットだけなら、個人的に強烈に好みのものです。舞台限定のサバイバルものはたまらない大好物。

ビデオ撮影によるポップでスピーディーな「相変わらず」感溢れるオープニングを14分ほどでまとめて、岩がドーン!!「……」ってところでタイトル。

これはイケる。

心が踊りました。

あとはグダグダにならなければいい。

途中何度もそういった演出が挿入されるのですが、それも主人公が疲労のためにみた幻覚というエクスキューズであり、内容と噛み合っているので問題なし。

基本的には徹底的に一人称での語り口で、主人公の最悪な状況と、そこから何とか抜けだそうとする悪戦苦闘を緻密に描いていく手法。

これは大変好みです。

127時間後に、主人公は「もうこれしか打つ手が無い」という、文字通りの決断を下すのですが、そこまでの過程で観ている方も納得できるほど悪戦苦闘しているので、その部分でのカタルシスが凄い。もちろんその描写は観ている方に直接訴えかける過酷な手法なのですが、そこを省略せずに描写したのは立派。あれがあるからこそその後の、文字通りの「開放感」が味わえるのですから。

あと非常に感心したのは、脱出したあとの描写も丁寧に省略せずに描いていたことです。崖の下にたまった水たまりに行くためにロープをキチンと使って降りていく場面の慎重なこと。観ている方としては主人公と一緒にあの苦痛を味わっているだけに、「ここでしくじったら総てが無駄になるんだぞ!」と心のそこから応援してしまう。


感情移入をキチンとうながしているからこそ体験できる感覚ですね。


ダニー・ボイルの最高傑作ではないでしょうか。