男たち、野獣の輝き

旧映画ブログです。

Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

シネスイチ板橋プログラム21まさにこういう映画が観たかった『ジョン・カーター』★★★1/2

ワクワクドキドキの異世界冒険ロマン

エドガー・ライス・バローズは僕が一番最初にハマった小説『ターザン』の作者。図書館で『ペルシダー』にもハマり、そしてこの映画の原作『火星のプリンセス』も大いに楽しみました。今回記憶にあるストーリーと随分違う印象を持ったのですが、それは原作の所謂三部作を巧く一本にまとめてあるそうです。どうりで。

エドガー・ライス・バローズ作品の持つ「異世界冒険ロマン」エッセンスがこれ以上ないほど絶妙に再現され、なおかつ色々とクリーンナップされている本作は強烈に楽しめました。

監督と共同脚色を担当したのは傑作『ウォーリー』のアンドリュー・スタントン。原作ファンということで実にあの雰囲気を見事に映画に置き換えているのは素晴らしい。また、キャラクター造形の付与も適切で、(エドガー・ライス・バローズ作品の登場人物は大体そうなのですが)特になんのバックボーンもない記号のような存在のジョン・カーターにちゃんと様々な過去を設定したのは巧い。ヘタしたら余計なことをと思いかねないところですが、中盤に用意されたエモーショナルな戦闘シーンで思わず泣いちゃいそうでしたよ。カーターの過去と戦いを完璧にシンクロさせた編集は、ジアッキーノの音楽と共に非常に素晴らしいものでした。

あと、子供の頃も不憫でならなかったサーク族の娘ソラが、より不憫に感じられたのも嬉しい。どう考えてもソラの方がいいオンナだろうにと悶々としていたもんです。バローズって無意識なのかもしれないけど、そういう人物の配置が結構ある。もっとも、プリンセスのデジャー・ソリスも原作と違ってキャラクターがキチンとしているから納得はできる。原作の記号具合は今思い出すとかなり凄かった気がする。ははは。ウーラもちゃんと出てきて大活躍するのがさすがに巧いと感心しました。アニメーションの監督はこういうキャラの重要性をよく理解していますよね。しかも妙に可愛いのが素晴らしい。


冒頭の何度も逃げようとする天丼ギャグも笑えるし、クライマックスで大ポカをするカーターを軽くど突くギャグも声が出ました。ああいう「クス」っていうギャグの重要性は『アベンジャーズ』でも立証されていましたが、アンドリュー・スタントンはさすがピクサー育ちだけにそつがない。

そして、一番感動したのは、ちゃんとエドガー・ライス・バローズが登場人物として登場し、プロローグとエピローグで活き活きと活躍していることです。あの構成こそ僕の愛してやまない「語り口」なので、あれをちゃんとやったのは満点です。しかも、エピローグなんてすごくジーンとくるんですよね。これもちゃんとキャラクターに命を吹き込んでいる脚色のおかげだと思います。

あの時にカーターと同期して「ああ、あの世界に戻れるんだ!」とワクワクしてしまったのですから、もうこの作品は完璧に原作の精神を守り抜いていると感じました。読み終わるたびに、またあの世界に浸りたいと思ってまた最初から読み直していた小学生の頃の気持ちが蘇りましたから。


傑作です。


余談ですが、ドラえもんの『行け!ノビタマン』と『宇宙開拓史』の「重力が弱いからスーパーマンになれる」っていう設定、思いっきりこの本からのイタダキなんですよね。


三部作のエッセンスが取り入れられているということなので、こちらの合本版を読みたいところです。