男たち、野獣の輝き

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Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

『タンタンの冒険 ユニコーン号の秘密』★★★

http://tintin-movie.jp/

スピルバーグ監督としては『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』以来の監督作品。ただし、スピルバーグらしく何ともう一本『戦火の馬』もほぼ同時公開。どんだけ元気なんだよ。

スピルバーグ初のアニメーションであり初の3D作品であり初のフィルムを使わなかった作品。

僕は原作は未読どころかどういうお話なのかもまるで知りませんでした。そして、最近のお約束で予告編も一切観ないままの鑑賞。

スピルバーグが冒険活劇(スタイルも似ている)をニ作続けて撮ったというのも何やら不思議な気分ですが、前作が冒険活劇としては少々居心地の悪い作品だったのに比べて、こちらの『タンタンの冒険』は時代設定的にもスピルバーグの趣味に合っているのか実に楽しそうに演出しているのが伝わってくる。初めてのアニメーションという事で、シーンのつなぎかたなども「ならでは」の映像処理に工夫が施されていて思わず笑ってしまう。

また、アクション・シーンの演出で一番大事な「何処で誰が何をしているのか」がキチンとわかるのが凄い。しかも初めてのCGアニメーションで縦横無尽なカメラワークを使っていながらそこを外さないのはやはりさすがスピルバーグ

特に白眉なのはクライマックスの1カット処理による大アクション・シークエンス。誰もが思いつくけど完全にやりきった監督はほとんどいないと言える凄まじいシーンでした。*1「どうせCGだしね」という白けたムードを感じさせない圧巻のシークエンス。

とはいえ個人的に没入感が乏しかったのがちょっとショックで、それ故にどのアクション・シーンもいまいちテンションが上がらない。活劇映画に必要不可欠な「ハラハラドキドキ」が微塵も感じられないのだ。

キャラクターとして愛犬のスノーウィが活躍するシーンはどれもこれも楽しいだけに、多分あの犬にだけ感情移入していたのでしょう。

また、アクション・シーン単体でも同じ冒険活劇なら、やはり『レイダース』の方が何倍も「ハラハラドキドキ」させられる。やはりこれは「絶体絶命」の状況作りを完全に放棄しているからなんでしょうね。先の1カット処理のクライマックスも、ドタバタ自体は大いに楽しめるんですが、致命的に「燃えない」んですよねえ。ジェットコースターが止まってるんですよ。

もっとも、これは僕がスピルバーグに対していつまでも「ないものねだり」をしているから生まれてしまう失望であって、『タンタンの冒険』を楽しむスタンスとしては間違っているのかも知れませんが。


ただ、原作の形式がそうなのかもしれませんけど、映画としてはリズムと言うか緩急の配分がでたらめな気もします。これは最近のスピルバーグがそういうのを放棄しているとも感じているんですけど、観ていてちょっと「面倒くさかった」のも事実。それぞれのシーンは予定調和に基づいて作られているのに、作品全体のバイブスが観客(僕)のソレとずれているように感じました。



今ちょうど友人に借りて『アンチャーテッド砂漠に眠るアトランティス』をプレイしているせいもあるんですが、アクション・シーンにおける予定調和に対して色々と考えさせられました。このゲームでは(恐らく)意図的に「できの悪いアクション映画」のようなアクション・シーンが続出するんですが、自分がプレイしているとそれがちょうどいいさじ加減で楽しめるんですよ。映画みたいなゲームというのが売りになっていますけど、実は製作者はキチンとゲーム的なシーン作りを意識しているんだと思います。

逆に言うと、映画で観るならやはり「ハラハラドキドキ」で燃えさせてくれるアクション・シーンを観たいなというのが個人的な欲望ですね。

ピーター・ジャクソンで言えば『キング・コング』の谷間での恐竜バトルなんか凄まじいテンションで常にハラハラドキドキさせてくれたじゃないですか。「うお! そこで恐竜が待ち構えてるかよ!?」的な。

*1:ジョン・ウーが『ハードボイルド』でやってみせた凄まじい1カット処理の銃撃戦ぐらいか。