男たち、野獣の輝き

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Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

『ヒアアフター』★★★

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あくまでもイーストウッド映画

冒頭部分の津波の映像が震災の津波を喚起させるので上映中止になっていた作品。ブルーレイは少し遅れたようですが特に問題なく発売されたようです。

リー・リンチェイも危ない目に遭ったスマトラ島沖地震で発生した津波をモデル(というよりも、ほとんどそのまま)にした冒頭の津波シーンは、ほとんどがCGIで描かれているが、さすがに現実に「本物」を見せつけられている立場からすると作り物臭さが否めない。ただし、主人公のひとりが体験する地獄絵図をその視点を中心に描くという手法は製作総指揮にも参加しているスピルバーグの得意とするもので、映画の中での災害の描き方としてのアプローチは際立っている。

と言っても、この冒頭が全体的に地味で静かなストーリーを商業的に成立させるために用意されているものであることは明白で、作劇上の必要性は全くない。「もう6年ぐらい経ってるしモラル的にもそろそろ問題なさそうだし、ちょっとやってみますか」的な映画屋としての意図は見え透いている。

逆に言えば、それ以降の極めて静かな語り口で進む「本編」は紛れも無く最近のイーストウッドのスタイルそのものであるし、抑揚を極力排除したいつものテンションはある意味極まっている。冒頭の津波シーンのせいで余計な期待を産んでしまっているのは明らかな失敗ではあるが、映画全体ではイーストウッド映画としていつも通りの安定さを保っている。

モチーフが「あの世」を描いているからといっても、全体的にはそれに翻弄される三人の登場人物によるドラマであって、それはそれでそれぞれ静かに胸をうつもので全編を通して揺るがない。

それにしてもイーストウッドが好んで創りだす「逆光」と「影の支配する画」は極端に支配的になっており、好きな人間にはこたえられない。