男たち、野獣の輝き

旧映画ブログです。

Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

『ファントム・ピークス』を読みました

一気に読ませる

実はこの本は単行本が発売されたときに、発売日に買っていたものです。それをやっとこさ読み終わりました。

と言っても、いくら読書障害がひどいボクでも4年近くかけて読んだのではなく、4年かけてやっとページを開いたという事です。自分でも驚くほど止まらくなって、結局最後まで一気に読みました。余談ですが、最近は自分の読書ペースを測りたくて一時間毎にページ数を確認しています。大体一時間に100ページ読めるようで、本編が292ページの本作はちょうど3時間ちょっとで読み終わりました。

こう考えると映画を観る時間とそれほど変わらないわけだ。

閑話休題

あとがきで黒沢清監督も書いていたように、作者の北林一光さんは映画が大好きだったそうで、特にスピルバーグの作品が好きだったそうです。

なので、言葉が悪いかも知れないのですが、良質のノベライズを読んでいるような感覚で、映像が常に頭に浮かぶ小説でした。なので、ボクとしては非常に読みやすく楽しめた作品です。

長野県の観光地に近い山が舞台になっており、そこで得体のしれない事件が起き始める。

中盤までじっと影をひそめてじわじわと展開していく「得体のしれない事件」の描き方が実に巧みで、その後の展開を殆ど予想させつつも「いったい何が起きているんだろう?」と不安感を感じさせてくれます。


<以下ネタバレ>


基本的には数多ある『ジョーズ』に挑戦した作品の一つなのですが、数多ある凡作駄作とは違って、動物パニック物としての『ジョーズ』を非常によく研究されている。そして、個人的にはボクのトラウマ映画である『プロフェシー恐怖の予言』も多分に意識している事がわかります(『グリズリー』成分も実は多分に入っているんですが)。

ボクが感心したのは、『ワールド・イズ・マイン』が陥ったような荒唐無稽さに逃げること無く、あくまでも正攻法な動物パニック物にしている点です。

ただ、残念なのは、後半になって人里に降りてきた動物が次々と殺戮を繰り返す展開になり、それはそれで緊張感のある展開が楽しめる一方、主人公が置いてきぼりにされてしまう構成や、『ジョーズ』では前半部分で消化してしまう部分で終わってしまう事でしょうか。

もっとも、それはあくまでも『ジョーズ』に比べてしまうからなので、作品そのものは(ちょっと尻窄みになっているにせよ)娯楽性にあふれた作品としてかなり楽しめる作品です。


あ、あとちょっと個人的に残念だったのは、「やっつけかた」でしょうか。動物パニック物といえば、『ジョーズ』以降のお約束で、「いかにしてやっつけるか」って事にアイデアを凝らすじゃないですか。ほとんど上手く行った試しはないんですが。ははは。この作品はそこがちょっとおざなりだったのが惜しい。

動物パニック物っていうジャンルはそこが最大の肝だと思いますよボクは。だって、スピルバーグが「そんなわけないだろう!」と原作者から怒られながらも、「そっちの方が面白いから」という素晴らしい理由で盛り込んだアイデアなんですから、そこは知恵を絞りましょうよ。ルイス・ティーグに怒られるぞ。


<以下ネタバレ終了>


久々に小説を一気に読み終わって、読書障害克服に一歩前進した気がするので、この勢いを殺さないためにも、次はなにか鉄板の傑作を読まなければ。


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