男たち、野獣の輝き

旧映画ブログです。

Beauty Devaisethのファイナル・ファンタジー14新生エオルゼア奮闘記

『ベスト・キッド』(2010年)


極めて真面目なリメイク

吹き替え版でしか上映していなかったのですが、ジャッキーの声は石丸博也さんでしたし、他のキャラの吹き替えも上質で問題ありませんでした。

ジャッキーがウィル・スミスと東京でばったり会った時、「今度一緒に映画を作ろう」ともちかけられたけど、ハリウッドではそんなのあてにならないと忘れていたら、ウィル・スミスから『ベスト・キッド』に出てくれないかと連絡があり、「キッドの方かい?」と切り返した。

というナイス過ぎるエピソードがありますが、中身はオリジナルに恐ろしいほど忠実なリメイクで、プロデューサーがオリジナルの人なので彼がかなり拘ったのかもしれませんね。

まあ、ご多分に漏れず中学時代にオリジナルの洗礼を受けている人間なので正常な判断は出来ないんですけど、
「引っ越した先のマンションの管理人が空手の達人」
「いじめにあってしまって仕返ししたい」
「ワックスがけとペンキ塗りというアメリカの子どもたちがやらされる二大お手伝いで何と空手が強くなる!」
という、恐ろしいほど中学生に受けるプロットが、今回は「キッド」というだけあって、実際に主人公の年齢設定が12歳になっています。これはこれで正当に「子ども向け」の映画に変更されているので間違いではないと思うんですけど、「中学生」に受ける要素が欠けてしまうと、ちょっと辛いのかもしれません。たぶん『コマンドー』とかと同類の映画なんだと思うんですよね。

加えて、オリジナルも無意味に127分もあった上映時間が、何とリメイク版は掟破りの140分!!

長い! 長いって!!


中国がロケーションに積極的だったこともあって、紫禁城は出てくるわ、万里の長城で訓練するわ、全部が近くの公園状態。あれは笑った。


「ワックスオン、ワックスオフ」は「ジャケットをハンガーにかけるかけない」に変わっており、それがクンフーの型の訓練になっているんですけど、そこはそれ『ベスト・キッド』マジックが発揮されて、いきなりジャッキーと互角に渡り合うほど「勝手に身体が動く」のが最高でした。『ベスト・キッド』の魅力はアレですからねえ。「いつの間にか強くなってる俺!?」

でも、ジャッキーはさすがにそれでは許さず、その後けっこう地味な本格トレーニングを積み重ねますけどね。ははは。だから、長いって。


お母さんのキャラも、母子家庭のたくましいお母さんをオリジナルから踏襲していて楽しい。コメディリリーフとしての活躍はオリジナル以上かもしれません。

ノリユキ・パット・モリタが公演していたミヤギを引き継ぐのは我らがジャッキー・チェンですが、こちらはオリジナルと違って終始仏頂面で近寄りがたいキャラ設定。ノリユキ・パット・モリタの持つ明るく人なつこい部分は、素のジャッキーに被ってしまうのか、あえて封印している節がある。まあ、ジャッキーはもともと永遠の弟子キャラでもありますから、ここは師匠としての振る舞いに今までと違ったアクセントをつけたのかもしれません。


最後に、反則攻撃で足を痛めたキッドが、再度試合に赴く場面。ここでは、「勝ち負けが問題じゃない」と諭すところまでは一緒だが、オリジナルの「バランスが保てない。これからもあいつらに会うたびにあいつらを上だと思ってしまう」という動機が、リメイクでは「このままだとあいつのことを怖がったままになってしまう」という説得力のあるものに変更されている。これはボクもリメイク版が小学生の子どもを対象にしている事を考えても適切な変更だと思います。


それにしてもエンド・クレジットのウィル・スミス夫妻の出しゃばりぶりは爆笑しました。思いっきりホーム・ビデオを垂れ流されている時の気分ですよ。ははは。