『たそがれ清兵衛』『隠し剣、鬼の爪』WOWOW版を観る
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アプコン?
WOWOWで山田洋次監督の藤沢周平三部作をHD放送。以前放送されていた頃は環境がなかったので、今回は録画。ところが、『武士の一分』はまだしも、この二作は笑っちゃうぐらいのボケボケ画質で、恐らくDVDをアップコンバートして観た方がましなぐらい。音声を5.1chで放送したのはさすがWOWOWですが、この画質は正直厳しい。
古い映画ではないので、松竹が用意したマスターが相当アレだったのでしょう。
山田洋次監督はそういった方面にこだわりなさそうだしなあ。
今は無きHD DVDでは三作とも発売されているのですが、そちらの画質も確認してみたくなりました。どんなもんなんだろうなあ。
BS hiとかで超絶高画質の放送とかしたらいいのになあ。
ただ、本編は文句なく面白い。
『隠し剣、鬼の爪』は公開当時、あまりにも前作の『たそがれ』とプロットが似通っていたので、ちょっと「?」だったのですが、「そういうもの」と分かった今観直すと、これも傑作。でも、続けてみると本当に笑っちゃうぐらい同じプロット。でも、別にプロットを楽しむだけが映画じゃないし、このプロットは鉄板で面白いプロットだから、これはこれでいいのでしょう。
『隠し剣、鬼の爪』では冬の庄内の描写が本当に素晴らしく、松たか子と永瀬正敏が再会するシーンの雪などは見事。
『たそがれ』は前半30分まで宮沢りえが登場しないのも今回時計を見ながら観て驚いた。しかも、1時間6分ぐらいでいったん出てこなくなる「いつものパターン」なので、実質的に登場しているシーンはかなり少ない。それでも凄く印象深いのはやはり宮沢りえが美しいからだろう。
後半部分の果たし合いをすることになってちょっとおしゃべりをしてから立ち回りという「いつものパターン」でも、『たそがれ』は「ちょっとおしゃべり」が結構長くとってある。田中みん(泥じゃない)の異様な存在感があるせいでちっとも長く感じませんが、映画のバランスとしてはちょっと普通じゃない。一連のあそこのシーンは最高です。
『隠し剣』では、「いつものパターン」に加えて、仇討ちのシークエンスがある分少し上映時間が長い。それでも、永瀬正敏演じる主人公の行動はなかなか感情移入してしまう。永瀬正敏は山田洋次の映画だと本当に輝くなあ。緒形拳のくそ野郎ブリが素晴らしくて、殺されて当然と思えるやつがちゃんと殺されるのも、この映画が他の作品と違うところでしょうか。
こう考えると『武士の一分』は「いつものパターン」を踏襲しつつも、主人公の目が見えなくなったり、セット撮影が素晴らしい家を中心にしたドラマ構成なっていたりして異質な感じです。あとヒロインが妻だったりする分、その妻の退場理由や、決闘の動機付けなど、かなり鬱な展開でもあるんですが。
山田洋次監督が初めての時代劇で、黒澤明や橋本忍が断念した、「武士の一日をリアルに描く」って事に挑戦した『たそがれ』の前半部分はやはり抜きんでて面白い。生活感が命の山田洋次監督作品ならではの傑作シークエンスで、それだけでも三部作の中では『たそがれ』が頭一つ抜けて好きですね。